アマゾンと急成長する物流ベンチャーの正体 EC危機は商機!マザーズ上場ファイズの勝算

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足元では全国に4000拠点を持つヤマトでさえ、さばききれないほどECの荷物が増えている。ヤマトは想定を上回る荷物を抱えた結果、外部委託を活用し採算が急激に悪化した。ファイズも自前の宅配ドライバーはいるものの、派遣ドライバーや外部事業社に協力を要請することも多く状況は同じだ。アマゾンの宅配を担う以上、ヤマトのようにキャパシティオーバーに追いこまれて収益が悪化する恐れはないのか。

この疑問に対し榎屋社長は「物流センターでの庫内作業をやりながら、宅配をやっているので、連携がとりやすい」と答える。庫内の状況がわかるため、今日は予想よりも注文が多いのか少ないのかなど、需要予測ができる。それによって、宅配ドライバーがどれだけ必要なのか早めに把握でき、逆に不要となればムダも省けるというわけだ。

宅配にとどまらず、上・中流も担っている点が宅配網のパンクの抑制につながる。関係者によれば、アマゾンで庫内作業と宅配の両方を行っている会社はファイズのみだという。

庫内作業では省人化の逆風も

川崎にあるアマゾンの物流拠点では、ピッキング作業効率を上げる機器が導入されている(撮影:尾形文繁)

だが、向かい風はファイズが得意とする庫内作業にも吹いている。物流センターには省人化の波が打ち寄せているのだ。

たとえば、在庫が保管されている棚から商品を取り出すピッキング作業は通常、作業者が伝票を見ながら人手により行っている。ただ最近は無人搬送車の導入が進んでいる。無人搬送車は在庫の棚の下に潜り込み、棚を持ち上げて作業車の方へ自動で運ぶことで、ピッキングの作業を軽減する。

そのほかにも荷詰めするダンボールを組み立てる機械、パッキングする機械なども開発されており、ファイズが入り込む余地が狭まる懸念がある。

ただ、「庫内作業ではロボット化しにくいプロセスも多い」(榎屋社長)。梱包では、ECで扱う商品が増え、商品の買い合わせパターンも日に日に増えている。荷姿(梱包された荷物の形)はさまざまで、ロボットですべて対応できるようになるにはまだ時間が必要だ。また、「個人的な見解ではあるが、省人化機器の成長速度よりもECの拡大の方が早い」(同)と見ており、庫内作業の拡大余地に自信を見せる。

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