眠らぬ巨獅子、人口の8倍呼び込む実力 《対決!世界の大空港1》シンガポール・チャンギ
「1987年からの20年間に280のベスト・エアポート・アワードを獲得した」--。シンガポール民間航空庁(CAAS)の符策民(フー・セク・ミン)シニアディレクターは上機嫌に話す。今や向かうところ敵なし。自他ともに認める世界ナンバーワン空港がシンガポール・チャンギ空港だ。
人口450万人の小国にして、国際旅客数はケタ違いの3500万人と日本の成田空港をも上回る。世界の各都市への路線数も成田の約2倍。アクセスのよさからチャンギ空港を利用する乗り継ぎ客が世界中から24時間集まってくる。航空会社も搭乗客を追い求めてチャンギに集まる好循環が続く。あのドバイをはじめ、世界の空港の多くがチャンギを手本に猛追中だが、それでも1歩も2歩も先を走っている印象だ。
思わず滞在したくなるストレスフリーと娯楽施設
7月上旬。日本から約7時間のフライトで赤道直下のチャンギ空港に降り立った。シンガポール航空を利用し、今年1月に供用開始したばかりの第3ターミナルに到着。天窓から自然光を取り入れた凝ったデザインにまず驚かされた。
だが、それは序の口だった。チャンギの最大の特徴であり、乗り継ぎ客にとって便利なのは、ほぼ同じフロアで用事を済ませることができること。他の大部分の空港で乗り換える場合、到着階と出発階が分けられていることが多く、上ったり下りたりと移動を強いられ、また手荷物検査などでも手間がかかる。
だが、チャンギでは、出国も入国も同じフロア。かつ手荷物検査は各搭乗口で行われるので、待ち時間でストレスを感じることはまずない。またシンガポールが最終目的地であれば、1階の入国審査に向かうだけ。入国に要する時間は飛行機を降りてから“最大”20分。シンガポール人は、自動読み取り機にパスポートをかざし簡単に入国していた。
また、次の搭乗口が別のターミナルでも、そのまま各ターミナルに連絡するシャトルトレインを利用すれば、苦もなく移動できる。案内もわかりやすく、ターミナル間の移動は簡単だ。CAASの符氏は「とにかく顧客の利便性を優先している。これまで数々の賞を獲得できたのは第1に効率性。加えてサービスも高く評価されている」と自負する。
確かに、そのサービス施設の充実ぶりは目を見張る。チャンギの施設は出発前、到着後、乗り換え時、いつでも利用できるのが特長。一方で成田は出発客と到着客をフロアで分けている。日本の航空関係者は、「日本では利用者は目的のゲートに急いでいくという前提があり、すべてが通路と化している。チャンギとは設計思想が違う」と指摘する。
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