OPEC総会で減産以上のサプライズはあるか 米国での産油量は意外にも増えていない
一方、トランプ政権が5月23日に公表した2018会計年度(2017年10月から~2018年9月)の予算教書では、戦略石油備蓄(SPR)の半分を売却する計画も盛り込まれた。
これは、世界最大の消費国である米国で国内原油生産量が増加する中、輸入依存度の低下を浮き彫りにしているといえる。しかし、その背景には、苦しい財政状況を改善させることが背景にある。米国のSPRは約6億8800万バレルと世界最大規模であり、ルイジアナ州とテキサス州の地下貯蔵施設で厳重に保管されている。トランプ政権は初年度のSPRの売却により、5億ドルの歳入を見込んでおり、その後は徐々に増加するとみている。売却期間は10年間で、日量にすると9万5000バレルとなり、現在の米国内産油量の1%に相当する。しかし、世界の石油需要の0.1%程度であり、需給面への影響はほとんどないとみてよいだろう。
原油価格は「あるべき価格」に水準訂正へ
コモディティ市場には需給面とコスト面という、絶対的な価格変動要因がある。これらはまさに価格形成の根幹をなすものであり、株価形成に例えるなら、企業業績と似ている。
外部要因や一部のヘッジファンドや投機筋のポジション需給で価格が変動することはあっても、それは価格形成の根幹をなすことはない。特にコモディティ市場では、その傾向がきわめて強い。相場の真の方向性は、ポジション需給だけで変えることができないのである。
NYMEX・WTI原油先物市場での投機筋のポジションは、5月16日時点で32万8952枚の買い越しとなり、前週から201枚の増加となった。前週の買い越し幅の減少が4万4393枚だったことを考えると、投げは大方出切ったといってよいだろう。その前の週には、投機筋が新規の売りポジションを大幅に積み上げていたが、これはファンダメンタルズを理解しないで価格下落に追随した機械的なショートポジションの構築である。
値動きだけをみて取引すると、このような安値売りのポジションを作ることになり、のちに高値での損切りの買い戻しを強いられることになる。もっとも、このようなありがたい市場参加者がいるからこそ、需給動向を理解して市場に参加している者にとっての収益チャンスが生まれるわけだ。
WTI原油はようやく50ドルを回復したに過ぎない。市場は、これまでのOPEC加盟・非加盟国による減産効果をほとんど評価できていない。今後、在庫が減少するにつれて、その効果を評価せざるを得なくなるだろう。25日のOPEC総会と29日の米ガソリン需要期入りがタイミングよく重なっている。これを機に、原油価格はあるべき水準に戻していくことになろう。
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