圧勝しても未知数な仏マクロン政権の将来

多くの有権者にとって「消極的選択」だった

しかし、結果としてフランス国民が選んだのはルペンではなく、マクロンという39歳の、国際的には無名の青年政治家だった。このことはフランス国民が、排外主義・ナショナリストの政権を拒否したことを意味する。

そのためには有権者は、第1回投票から、ルペンに勝つことができて、無難な政策を掲げた候補を選ばねばならなかった。第1回投票後の調査 (4月30日~5月1日・対象者1万3742人、『ル・モンド』紙)では、第2回投票でマクロンに投票するとした人のうち60%が「他にいないから」という理由をあげ、ルペンに投票するとした人のうち59%が、「この人だから投票する」と答えている。好感度で見ると、ルペンを「嫌い」とした人は51%だが、マクロンを「好き」と答えた人も7%であった。これは、ルペンを忌避する人がマクロンをやむなく選択する、という結果だ。

だから国民には、フラストレーションがたまる「消極的な選択」「負の選択」となった。棄権が歴代3番目の高さに及んだことも、それを表している。そして6月に控えている国民議会選挙を前に、フランス国民の61%が、マクロン派が絶対過半数を得ることを望まないと答えている。これはある意味で驚くべき現象だ。

というのは、第5共和制で大統領と国民議会議員の任期をそれぞれ5年にして、同じ時期に選挙を行うようにした理由は、大統領の多数派がその勢いで議会でも多数派になり、実行力のある政権を作ることにあったからだ。ところが今回マクロン大統領の誕生に当たっては、国民はそれを望まない、ということだ。第5共和制の論理が否定されたのである。極右ルペン・シンドロームは、第5共和制の根幹を揺らしているのである。

「エリート」と「庶民」の対立構造

また、決戦投票に残った2人の候補の対立は、エリートと庶民・人民の対立構造ともなっていた。マクロンの支持者は、大都会や青年層、高収入・富裕層に多いことが指摘されている。逆にルペン支持者は、農村の生活苦に直面する人たちや、労働者・下級事務職員・失業者などに多いという統計も多数出ている。ルペンが「フランス人民の大統領」を目指す、と豪語したのも根拠なしとはしない。

“世界はグローバリゼーションという名の国際金融資本が労働者階級を搾取している”という100年も前のマルクス・レーニン主義テーゼを力説し、「反EU」を掲げた極左のメランション候補が19%以上の支持率を第1回投票で得たことにも、それは明らかだった。思想は右と左で違っていても、エリート資本への庶民の抵抗の一翼を担うという点では、ルペンとメランションは一致していたのである。

国民戦線が急成長した大きな要因は、社会不満を吸収するために社会福祉政策重視を掲げたからだった。しかしそれはフランス第1主義に支えられていた。「福祉排外主義」と呼ばれるポピュリズムに共通の点である。

大統領に当選はしたものの、基盤の脆弱なマクロン政権の道は平坦ではない。経済・雇用、社会保護、教育改革、テロ対策など難題は山積みだ。

経済リベラリズム、左派的社会保障政策重視を掲げるマクロン政権は、社会党右派の意見であり、オランド政権と実は立ち位置が良く似ている。女性スキャンダルで失脚した社会党リベラル派のシュトラス・カーン元国際通貨基金専務理事の下で活動していた青年たちの多くが、マクロンのもとに集まっている。また「もっと働き、もっと稼ぎましょう」というスローガンを掲げ、柔軟な対応と安全を意味する「フレクセキュリティー」を強調したサルコジ元大統領の発想を、マクロンは共有する。

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