JR貨物、悲願の株式上場に立ちはだかる障壁 鉄道ついに黒字化、物流の存在感も高まるが

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データを見ると、駅の収支から積載効率まですべてがわかる。空のコンテナがどう動いているか、定時発着率はどうなっているか。「こうした数字に基づいて、全社的に議論をすることで、会社全体に経営的な感覚が浸透してきた」(田村社長)。

JR貨物の田村修二社長は、石田忠正会長によって社内に経営感覚が浸透したと話す(撮影:今井康一)

売り上げの伸びとともに鉄道事業の赤字幅は少しずつ縮小、2016年度は台風の影響で北海道の農産品輸送が大きく落ち込んだものの、鉄道事業の売り上げは微増を確保。

物件費などコスト削減が奏功して黒字転換を果たした(なお、北海道では台風の影響で船舶による代行輸送を行ったが、この費用は特別損失として計上しており、営業損益への影響はない)。

2017年度は引き続き増収を見込むものの、「燃料費の上昇、減価償却費の増加などが見込まれ、鉄道事業の収支はプラスマイナスゼロ」(JR貨物)という。

線路使用料が上場の障害に

JR貨物はJR九州(九州旅客鉄道)に続く株式上場を経営目標に据えている。鉄道を除いた関連事業は好調に推移し、東京貨物ターミナル駅に建設中の大型物流施設が稼働すれば、物流事業者としての存在感も高まる。これで鉄道の黒字が定着すれば盤石の体制になる。

ただ、上場への障害と見られているものがある。JRの旅客鉄道会社に支払う線路使用料の問題だ。

自前の線路をほとんど持たないJR貨物は他社の路線の上を走るため、線路使用料を支払う必要がある。JR旅客会社に支払う線路使用料はアボイダブル(回避可能)コストルールという計算方式に基づく。

その仕組みは、仮に貨物列車が走行しなかった場合の線路の保守費用を計算し、次に貨物列車が走行したことでどれだけ保守費用が増えるかを計算し、その増加費用だけをJR貨物が線路使用料として支払うというものだ。

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