国内最大の民間投資家が「ESG」に本気なワケ 日本生命が最大2000億円の追加投資を決定

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ーー同じ業種で評価項目が変わるとか、投資対象にならない業種もあるのか。

業種ごとに重要視している項目は同じ。たとえば、エネルギーの分野であれば、重要視している項目は共通している。同じセクターでも優劣が決まるということだ。

ソフトコモディティや石炭には投資しない

ある業種を悪いと決めつけることはないが、アクサIMとしては絶対に投資をしないセクターがある。それは、兵器・武器、ソフトコモディティ(コーヒー生豆、砂糖、綿花などの農産品)、パーム油、石炭だ。その理由は環境に配慮しているからではなく、検討した結果、長期的なビジネスとして成長が期待できないからだ。

ーー日本企業の情報開示とESGについてどう思うか。

日本はまだ道半ば、改善が必要だろう。情報開示について十分とはいえない。もっと英語で情報を出してほしい。また、日本のカルチャーなのか、セルフプロモーション、自己PRがうまいとはいえない。もっと積極的な広報活動が必要だ。

将来的には、日本でもESGによって、企業のリスクに関する理解がより深まると思う。かつてはなかったような追加情報を入手することが可能になってくるからだ。さらに、今後の規制強化の流れを予測することができるようにもなる。企業が抱えている問題は、これから公表データの中により織り込まれていくだろう。

たとえば、CO2や気候変動がそうだ。企業業績の中では、今まで規制上、要求されていなかった。CO2削減に関するコストは勘定科目として捕捉されているわけではない。だが、フランスでは、気候変動やCO2に関する企業業績への影響を財務諸表上、織り込むことが義務づけられるようになった。

さらに消費者の志向の変化をとらえる必要がある。投資だけでなく、モノを買うことにも、ESG的な思考を消費者が持つようになっている。企業は今後、こうした変化を見極める必要が出てくるだろう。

木村 秀哉 東洋経済 記者

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きむら ひでや / Hideya Kimura

『週刊東洋経済』副編集長、『山一証券破綻臨時増刊号』編集長、『月刊金融ビジネス』編集長、『業界地図』編集長、『生保・損保特集号』編集長。『週刊東洋経済』編集委員などを経て、現在、企業情報部編集委員

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