ソニーとパナソニック、次なる金脈は「介護」 「失敗しようのないビジネス」で着実に稼ぐ
本業の家電事業との相乗効果については両社で姿勢が異なる。パナソニックの場合、自社の施設に家電や介護用ベッドなどの介護機器を導入する。施設利用者から使用感を聞き製品開発に生かすほか、外部の介護事業者に販売する際に実用例として紹介もしている。介護施設の建設は傘下のハウスメーカー、パナホームが担当するなど、グループ全体の連携を意識する。
介護はソニー金融事業の次なる柱
一方、ソニーの介護事業は、金融事業の持株会社「ソニーフィナンシャルホールディングス」の傘下で、同社の生保・損保・銀行に次ぐ4本目の柱に育てるべく参入した経緯がある。そのため、AV機器事業との連携は念頭にない。施設内に同社製品が置かれてはいるものの、そもそもの施設数が少ないため、売上高8兆円企業のシナジーと呼ぶには小さいだろう。施設名も「ソナーレ」というブランドを冠しているため、一見してソニーグループの施設だということはわからない。
3年前の立ち上げ時からソニー・ライフケアの出井学社長は、「ソニーのハードを売ることを主目的に介護事業をやっているのではない」と語る。
「(ソニー傘下であることは)財務的な安心感を生み、人材を採用するうえで有利に働く点もあるが、いたずらに(SONYという)4文字を付ければ価値が上がるとは考えていない。ただ企画に際して物事の本来の意義、原点に立ち返って発想する、という精神は共通している」(出井社長)。
介護施設のソナーレは、法定以上に手厚い職員配置や間口の広い居室、遮音性の高い引き戸などが特徴。その分月額利用料も40万~50万円と高額だが、「顧客を第一に考えるものづくり企業としての思想が生かされている」(同)という。
姿勢は違えど、脱・家電依存を目指すのはソニーもパナソニックも同じ。成長が確実視されている介護業界には、損保や外食など異業種からの参入も目立つ。競争が激化する市場で、電機の巨人たちは介護でもその存在感を示せるか。新たな挑戦が始まっている。
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