急成長BAKEは「洋菓子界」の常識を壊せるか 大ヒット「チーズタルト」販売会社の次の一手
「きのとやで海外の催事に出展していたとき、商品を入れる紙箱がなくなり、鉄板ごと商品を出したことがありました。すると行列ができ始め、瞬く間に売れていきました。『これだ!』と感じた瞬間でした」(長沼氏)
当時、このヒントに基づき店舗を改装するなど改良を加え、8カ月で約30倍に販売量を増やしたという。
株式公開も考える
3つ目が、商品のブランディングとブラッシュアップへの投資だ。チーズタルトは1個200円と、多くの人が納得できる価格設定。
しかし長沼氏によると、「利益率は高い」とのことだ。持ち帰り型店舗なので、賃料や人件費などが抑えられる。カフェ業態を目指す予定もない。その代わり、店舗やパッケージのデザインなどブランディング、商品のブラッシュアップに投資を行っている。
「店舗やパッケージのデザインには若手クリエイターや社内のデザイナーを起用しています。新しさや感性の鋭さを感じさせ、誰もが思わず立ち止まるようなデザインが狙いです」(長沼氏)
客の立つ位置によって音楽や、映像が変化するモニターを店内に設置している店舗もあるそうだ。
また商品のブラッシュアップについては、ABテストを繰り返しながら味の改良やニーズ変化への適応を図っているほか、「オープンラボ」という研究室を社内に設けて、「おいしさ」の科学的な検証をつねに行っているという。
このように、きのとやの味をベースとした商品力の強さに、長沼氏ならではのアイデア、スタートアップとしてのスピード感などが掛け合わさって、同社の急成長を生み出している。
「土産菓子のブランドはたくさんありますが、中身は大量生産の流通品とほぼ変わらない。たとえば有名なパティシエを看板にするといった“企画の面白さ”で売っているところが多い。しかも、2〜3倍の価格で売っています。ここが、“おいしさの本質”を追求し、お菓子を進化させるポイントになると思いますし、私たちが参入するチャンスだと考えています」(長沼氏)
急成長を遂げるBAKEだが、今後はどうか。「もっと大きな会社にしていきたいとはつねに考えています。将来的な株式公開も選択肢の1つとして検討しています。ただし、一歩間違えれば、会社の方針に対する外圧になりかねないため、慎重に考える必要があります」(同)
約150人の社員は、製菓業以外の多業種から確保。2016年9月からベイクに加わったCFOの西尾修平氏はゲームで著名なミクシィの元取締役だ。「お菓子の本質の追求」という方針を軸に、ボトムアップで多角的かつスピーディな事業展開を行う。
とはいえ、日本の洋菓子市場は、流行の変化が激しい。長沼氏は売り上げが下がった店をほかのブランドに転換することで、テコ入れするような店舗戦略を立てる。
「投資は1年以内に回収できていますし、店舗の改修は5〜10年のスパンで考えています。そのために私たちはブランドのコンテンツメーカーであり続けなければいけないと思っています」(長沼氏)。
目先の流行にとらわれず、着実な成長を遂げることができるのか。まずは土産菓子という新たなステージにおいて、その実力が試される。
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