東洋紡が「四季島」の"快適さ"を支えていた 鉄道会社がクッション材を選ぶ基準とは?

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ただ、鉄道車両で採用された最大の理由はその安全性だ。ウレタンは燃焼時に有毒なシアン化水素ガスを発生する性質を持つ。

鉄道車両の場合、「トンネル内での火災など万が一の場合に備えて、燃焼時に発生する有毒ガスの量がより少ない素材が求められる。そのため、有毒ガスの発生がより少ない、ブレスエアーが選ばれた」(東洋紡の生活資材事業部ブレスエアーグループマネージャー 森島淳氏)という。

ブレスエアーは1996年に販売開始された。消費者向け最終製品の製造は行っておらず、寝具メーカーや鉄道車両の内装メーカー向けに素材として販売している。

東洋紡は1980年代までは繊維事業で利益を上げ、大林素子氏などが所属したバレーボールチームの「東洋紡オーキス」を抱えるなど、経営は順調そのものだった。

しかし、1990年代中頃から中国メーカーの台頭やSPA(製造小売業、製造から販売までを手掛けるユニクロのような業態)の登場で、サプライチェーンの流れが変化。価格破壊が始まったことで繊維事業は苦戦を強いられ、利益が急減した。

業績回復を目指して活路を求めたのが、フィルム樹脂やエアバック用基布など、繊維事業で培った技術を生かした新分野だ。その中の一つが、クッション材として開発を進めてきたブレスエアーだった。

介護など新分野へ展開拡大

四季島ではソファベッドにも活用されている(写真:フランスベッド提供)

売り上げなど詳細は公表していないが、近年は東北新幹線のグランクラスや東海道新幹線、JR西日本(西日本旅客鉄道)のサンダーバードや新快速225系、大手私鉄各社の座席シートなどの鉄道車両に広く採用されている。

さらにユニ・チャームのペット専用ベッドなどにも採用が進んでおり、発売から20年以上たった今も成長が続いているという。

今後は既存の販路に加え、介護施設や宿泊施設向けの取り引きを強化する方針だ。この4月にはロゴマークを刷新し、拡販に一段と力を注ぐ。将来的には「クッション材のスタンダードにしたい」(森島氏)と意気込む。

これまでの「地味にすごい」を脱して、誰もが知るクッション材になることができるか。挑戦は始まっている。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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