運行開始から25年、新幹線「のぞみ」誕生秘話

筆者だけが知る、試乗会に現れた「あの人」

JR東海の高速試験車300Xの「カスプ型」先頭車(筆者撮影)

この300系量産車による「のぞみ」の運転開始後、JR東海をはじめ新幹線を保有するJR各社はさらなる高速化をめざし、次世代新幹線用高速試験車の開発を進めた。そしてデビューしたのがJR東海の試作電車「300X」、JR東日本の試作車「STAR21」、JR西日本の「WIN350」だった。

WIN350は新幹線初の時速300キロ運転を山陽新幹線で実現した500系の試作車であった。300Xは空気抵抗、風の流れなどを考慮し、先頭車の形状が両端でそれぞれ「ラウンドウエッジ型」「カスプ型」と異なる形状となり、のちに登場する700系の先頭車に生かされることになった。

これら3つの高速試験車はすでに退役しているが、先頭車は「新幹線の聖地」でもある滋賀県米原市の鉄道総研・風洞技術センターで保存されている。また、J1編成は先頭車が名古屋市のリニア・鉄道館で300Xの一方の先頭車とともに保存されている。

日本の鉄道において時速300キロ時代への道を拓いた300系も、さらなる高性能とコスト面のバランスを追求した第4世代の新幹線電車700系が登場した1997年以降は次第に「のぞみ」運用から外れ、世代交代の時期を迎えた。700系はデビュー当時、その独特な前面形状から「かものはし」と呼ばれて親しまれ、「鉄仮面」と呼ばれた300系の形状とは好対照なスタイルで東海道・山陽新幹線の花形車両になった。

鉄道愛好者の好みは多種多様だが、筆者は東海道新幹線の車両では0系に続いて300系が好きな電車である。それは開発の経緯、公式試乗会での島秀雄さんの乗車、初の女性運転士の登場など、いろいろと感慨が深いからである。

「のぞみはかなう」

300系の最終日、側面にラストランの文字を描いた車両(筆者撮影)

新幹線の電車は300系の登場以降急速な発展を遂げた。2007年には、700系をさらに進化させたN700系が登場。やがて、ついに初代「のぞみ」の300系も終焉を迎えることになった。最後の営業運転は2012年3月16日。車体に「300ありがとうLASTRUN2012.3.16」の文字を描いた300系によるさよなら運転「ありがとう300系のぞみ号」が東京―新大阪間を走り、多くの鉄道ファンに見送られながら300系は新幹線から姿を消した。

300系「のぞみ」なき後も、N700系、N700Aといった最新型の新幹線電車により「のぞみ」はますます勢いをつけ、文字どおり日本を代表する列車に成長してきた。

日本の大動脈を疾走する「のぞみ」は、日本の経済、人々の暮らしをどれほどまでに支えてきただろうかと改めて思うとき、私はふと島秀雄氏と、東海道新幹線の建設に尽力した元国鉄総裁・十河信二氏の姿を思い浮かべずにいられない。

「希望(のぞみ)はかなう……」と。

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