「説明が下手な人」にありがちな残念な伝え方

「あれもこれも……」と欲張ってはダメだ

この事例から、ぜひ知っていただきたいキーワードが「網羅性」と「代表性」です。

説明が苦手な方の大半が、「代表性」ではなく「網羅性」を優先してしまっているために、うまくまとめて伝えることができないのです。

「限られた数ではすべてをカバーできない。だから、まとまらない」

あなたには、こうした固定観念がどれくらいあるでしょうか?

「ある程度代表していれば、とりあえずこのくらいでいいや」「どうせ覚えきれずにほとんど忘れてしまうのだから、3つくらいでまずはよしとしよう」という、いい意味で妥協できる柔軟性がどれくらいあるでしょうか?

先ほどご紹介した「走る、曲がる、止まる」も、必ずしも網羅しているわけではないのは、お伝えしたとおりです。ただその一方で、網羅はしていないが、ある程度「代表」はしている。その3つですべてをカバーするわけではないが、重要な点はおおむね押さえている。まずはこれだけ頭に入れておけばOK――これが「代表性」という考え方です。

説明が苦手な人は、つい「あれもこれも……」と過剰な数の情報を説明しようとしてしまいます。この傾向が強い人ほど「この情報だけではまだ網羅できていない。だから、十分に伝えられない」と言っては頭を抱えます。

ですが、端的にまとめて説明することが得意な人は、そもそもそんなところで悩んではいないのです。情報の数をむやみに増やしても、どうせ忘れ去られておしまいです。「網羅性」による説明は自己満足であって、相手のためにはならない。だったら「このくらいでOKとする」ことを臆せずやってもいいのではないでしょうか。

「絞る」ことで「できる」ようになる

「網羅性」にこだわる人というのは、えてして余計な情報を捨てることを「もったいない」と感じがちです。しかし、いまは情報過多の時代。こちらが望んでいなくても、情報がどんどん入ってきます。それらをうまく活用するには、余計な情報はきっぱりと捨て、削ぎ落としていく必要があるのです。

それはたとえば「クローゼットの中にある大量の服」と同じようなものです。

どんなにたくさんの服を持っていても、それを着る自分の体は1つです。服は着てこそ持っている意味があります。つまり、一着一着の服を活用するには、必要にして十分な着回しができるだけの適度な量にすることが大事です。

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情報も同じで、知るだけでなく、活用できて初めて意味をなします。そして、活用するには適度な量まで減らす必要があります。そのカギが「網羅性を手放す」ことなのです。

膨大な情報のなかから「あれもこれも……」ではなく代表的な「これ」(多くても「あれ」と「これ」と「それ」の3つ程度)だけを残し、あとは捨てる。その代わり、その残した情報だけは繰り返し活用する。

「網羅性」に囚われてしまうのは、物事を「わかるかどうか」で捉えているからです。そうではなく「(実践)できるかどうか」を優先して向き合えば、代表的なものに絞り込むという「代表性」の価値観にも気づけるのではないでしょうか。

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