ニッポンの石油化学、静かに迫る危機 三菱ケミ-旭化成連合、エチレン1基停止へ
業界団体である石油化学工業協会によると、2012年のエチレン国内生産は、前年比8%減の614万トン。2000年以降では最低の国内生産であり、リーマンショック後の08~09年にいったん落ち込み、11年に一段と落ち込んだ水準を、12年はさらに割り込んでしまった。バブル崩壊後の水準とほぼ同等となる。現在、国内では計10社が各地のコンビナートで計15基のエチレン設備を運営しているものの、足元の稼動率はおおむね8割程度。各社ともに採算難にあえいでいる。
エチレンの内需は長らく年500万トン前後で推移しているが、国内生産能力は約760万トンにも及ぶ。余剰分は輸出に回して補ってきたものの、その拠り所だった中国の経済減速によって均衡が崩れるとともに、日本の石化産業が抱えてきた高コスト体質という構造的な問題も露呈している。
中東、中国の設備増強、日本勢に打撃
近年、天然ガスを由来とする安価なエチレンに強みを持つ中東や、最大の需要地である中国で、年100万トン級の大型プラントの新・増設が相次いだ。ナフサを原料にする日本の石化産業は、中東に比べてコスト差が20~30倍になるともいわれる。日本の石化製品は中国をはじめとする輸出先のアジアからはじき出されるとともに、中東や中国の安価な輸入品が日本に流入してくる事態となった。足元の円安も、これまでの流れを変えるほどの要因にはなっていない。
加えて、この先、日本の石化産業が直面する脅威が、米国の「シェール革命」だ。頁岩(けつがん)から取り出す天然ガスやオイルの開発が進み、これを原料にした大型のエチレンプラントが2016~17年に相次いで始動する見込みとなっている。それだけで、日本勢の年産760万トン程度に匹敵するといわれる。「基本的に米国内でまかなうと言われているが、そんなことはないだろう」と、三菱化学の石塚社長は日本勢への影響を懸念する。
日本の石化産業は数年先、中東、中国と米国から間違いなく、「挟み撃ち」に遭う。コスト競争力を考えれば、単純な汎用品では太刀打ちできず、日本の石化産業は、ますます国際競争力の低下に陥ることが想定される。