英国で「新幹線」がSLを従えて走行したワケ 日本では見られない複々線4列走行が実現

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さて、「4世代列車のデモ走行イベント」に登場した列車を見てみよう。「過去」を代表したのは、1923年竣工のSL「フライングスコッツマン」だ。さまざまなSLの走行記録を打ち立てた名車で、1934年にはSLとして初の時速100マイル(161キロメートル)超えを達成したほか、ロンドン―エディンバラ間を無停車、8時間で走る快挙も成し遂げた。1963年にいったん退役したものの、国立鉄道博物館が2006年から10年をかけ「走れる状態」にまで戻した、という奇跡の機関車でもある。現在も時折イベント列車を牽引し、ロンドンにも乗り入れることがある。

「4世代の特急」が並んで走る沿線には多数の「撮り鉄さん」が押し寄せた。(写真:Courtesy of Virgin Trains)

「現在」を代表したのは、1970年製造の長距離列車車両「インターシティー125」と1988年製造の「インターシティー225」だ。125は最高時速125マイル(201キロメートル)で走るディーゼル特急だが、あずまの導入で退役することが決まっている。一方の225は最高時速225キロメートルで走る電気機関車牽引の特急列車で、ロンドン―エディンバラ間を最短3時間半で結んだ記録を持つ。

しかし225は老朽化が進んでいる。2018年以降にあずまが東海岸線を走り始めると、「225を避けてあずまの運行列車に乗ろう」と考える利用者が増えることだろう。鉄道業界のプロたちの間でもあずまは注目の的となっている。ヴァージントレインズが昨年秋に行ったあずまの運転士募集では、78人の枠に対し、実に1万5000人もの応募があったという。

本線を塞いでのイベントは日曜早朝

ヨーク駅駅での見学会では「あずま」も大いに地元ファンらの注目を集めた(写真:Courtesy of Virgin Trains)

「世界から注目を集める一生に1度の機会となる、この特別なイベント実施に当たり、一般の鉄道利用者にいかなる迷惑もかけてはならない」

東海岸線の本線を塞いで行うこととなった今回の催しについて、線路などの鉄道インフラを管理するネットワークレール社でロンドン北東部―ミッドランズ東部担当マネージング・ディレクターを務めるロブ・マッキントッシュ氏はこう語った。

イベントは、日曜の早朝6時に4つの車両をヨーク駅北方約15キロメートルにあるトラートン駅付近に集め、そこから午前8時に時速30〜40キロメートルでヨーク駅へと並んで乗り入れるという段取りが組まれた。

沿線には、早朝から大勢のファンが押し寄せ、この日のために観覧エリアへの特別バスも仕立てられたほどだ。ただ、足場のあまり良くない線路周辺には多数の「撮り鉄さん」たちが陣取ることが予想されたことから、家族連れの見学場所としてヨーク駅構内が推奨されたほか、駅には4本の列車が向かって来る様子をとらえた大型モニターが設けられた。

トラートン駅からヨーク駅へのお輿入れの際には、一時、あずまが他の3つの列車に先行して進む場面も見られた。英国では新参者のはずのあずまが、圧倒的な存在感を持つSL・フライングスコッツマンや歴史ある他の特急車両を従える姿は、まるで横綱が太刀持ちと露払いを従えて土俵入りするような雰囲気を感じさせた。

あずまの東海岸線での営業運転まであと約2年。生産の地・下松での大きな注目を浴びた「日立の新幹線」が、今回のヨークでのイベントを機に、英国での知名度がさらに上がることを期待したい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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