仏大統領選、マクロン勝利でEU離脱「なし」か ただ経済政策があいまい、若さゆえの弱点も

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渦中のマクロン氏は午前5時15分すぎ、ブリジット・マクロン夫人を伴って支持者の集まる会場に登場。支持者による「マクロン、プレジダン(大統領)」の連呼の中で迎えられた同氏は、「ナショナリズムの脅威に直面するすべてのフランス人のための大統領になる」と述べ、ルペン氏との対決に強い意欲をにじませた。「欧州再建のため皆さんの協力が必要だ」と支持者に語りかけるなど、EUと協調していく姿勢も強く打ち出した。

これに対して、ルペン氏は支持者を前に、「私はフランス国民から選ばれた候補者だ」と強調。グローバリゼーションの流れを「野蛮」などと表現し、「フランス第一主義」を改めて前面に掲げた。

決選投票では、1回目の投票で2人以外の候補に投票した支持者の票をどれだけ取り組むことができるかが、焦点になる。最新の世論調査によると、2回目投票で「マクロン氏に投票する」と答えたのは62%。一方、ルペン氏の支持は、38%にすぎない。

1回目の投票で敗北したフィヨン、アモン両氏は支持者に対して、2回目の投票でマクロン氏への投票を呼び掛けた。共和党の大統領予備選挙で、フィヨン氏に敗れた現ボルドー市長のアラン・ジュペ元首相も、会見で「国民戦線はフランスを混乱に陥らせる」と語り、マクロン氏支持を表明。このため、2回目投票はマクロン氏有利とみられる。

39歳の若さで政治経験が足りない

ただし、マクロン氏が勝利したとしても、「弱点」はある。

その一つが同氏の打ち出した経済政策だ。「財政削減にも言及しているが財源などがあいまい」と欧州経済の専門家は語る。マクロン氏は昨年まで社会党に属し、フランソワ・オランド現大統領の政権下で経済・産業・デジタル担当相を務めており、「現大統領の政策を継承したにすぎない」との指摘もある。選挙戦ではフィヨン氏から、「エマニュエル・マクロンではなく、”エマニュエル・オランド”」などと揶揄された。

フランス国民には、若さゆえの政治経験の足りなさを不安視する声もある。決選投票までの残り2週間で、マクロン氏がこうした批判にどう答えていくかも、選挙戦の行方を左右しそうだ。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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