アジア人は結局、米国で差別されているのか ユナイテッド航空事件で浮上した疑問

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もっともアラバマ州、ルイジアナ州、ミシシッピー州などの「ディープサウス」と呼ばれる南部の一部の地域に行けば、いまだあからさまな有色人種への差別も存在し、アジア系もその対象になることは珍しくない。「ガラガラのレストランでトイレの横の席に案内されたあげく、無視されて注文をなかなか取りに来てもらえなかった」「学校でイジメやゆすりにあった」「ショッピングにいったらあからさまに高圧的な対応をされた」など、イヤな話もたくさん聞く。

また、過去を振り返るとアメリカにおけるアジア系移民たちの歴史は、今では考えられないほど過酷であったこともわかる。1882年に成立した中国人移民を禁じる「中国人排斥法」は米国史上最も重い移民制限の1つだったとされるし、第2次世界大戦中には11万人もの日系人たちが、敵国からの移民という理由で強制収容所に送られた事実もある。

ありえない差別を受けた日系人の歴史

アメリカ人の間では、「大戦中、アメリカ国内にも強制収容所があり、アメリカ国籍をもつ日系人たちの生活や財産が強制的に奪われた」という事実を知らない人が非常に多い。私がかつて住んでいたワシントン州・シアトルの対岸にあるベインブリッジ島は、西海岸で強制収容所に送られた最初の日系人が暮らしていた土地だったため、当時の苦労を学ぶ機会にも多く恵まれたが、彼らが受けてきた差別の壮絶さは身震いするほどだ。彼らは差別に耐え、誇り高く文句も並べず、政府のありえないような非情な指示に黙って従った。

そんな歴史的背景もあるために、アメリカ政府はいまだにひょっとすると「日系人は文句を言わずに政府に従う」という当時のイメージを払拭することなく、本来検証すべきアジア人のマイノリティとしての位置づけをうやむやにしてしまっている部分もあるのではないだろうか。

私自身は幸運にもあからさまな差別をアメリカで受けた経験はないに等しいが、それは戦争を経験しているこうした日系人が、悲しい歴史が繰り返されることがないよう、社会に働きかけ続けた大変な努力があったからこそ、とも感じる。時代が流れれば、社会は変わる。そして社会を変えるのは、私たち「人間」なのだ。時代は変化の時を今迎えようとしている。アメリカ人たちはこの歴史の転換期に、どんな社会をこれからつくろうとしているのだろうか。

ジュンコ・グッドイヤー Agentic LLC代表、Generativity Lab代表

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Junko Goodyear

アメリカ在住。青山学院大学卒業。日本にて約20年の企業経営のち、現職。日本企業のアメリカ進出、アメリカ企業の日本進出のコンサルテーション&サポートほかを行っている。シアトル近郊最大の子供劇団のひとつ『Kitsap Children’s Musical Theatre』顧問を務めながら、次世代継承と・社会還元共有型マーケティングを考える『ジェネラティビティ・ラボ』も主宰している。

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