異次元の金融緩和が始まる前に消費者物価指数(生鮮食品を除く総合:以下同じ)の前年比上昇率はマイナスになっていたが、2014年初めにはプラス1%台半ばとなっていた。この年の4月に消費税率を5%から8%に引き上げた後は、上昇率は低下傾向をたどり、増税の影響が消えた2015年夏ごろには再びマイナスに圏に入ってしまった。しかし、今年に入ってプラスに転じており、2月は前年同月比0.2%の上昇となった。筆者らは年末ごろには上昇率が1%程度になると予想しているが、政府・日銀が目標としている2%に達するのはいつのことになるかわからないというのが民間エコノミストのコンセンサスだ。
こうした動きには原油価格が大きく影響しているうえ、消費税率を引き上げたことの影響をどう考慮すべきかなど、さまざまな要因が絡んでいる。思い切った金融緩和を実行すれば、原油価格や為替レートといった外部要因がどうであっても2%の物価上昇を実現できるという、黒田日銀の楽観的な見方が間違っていたことは明らかな事実だ。
中央銀行の独立性は微妙で複雑だ
立法、行政、司法の三権が分立していないと民主主義が機能しなくなるリスクが高まるというのは、歴史の教えるところだ。衆議院のウェブサイトを見ると、「日本国憲法は、国会、内閣、裁判所の三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めています。」という説明がある。
これほど確立されたものではないが、中央銀行が行う金融政策も政治から独立しているほうがよいというのが現在の常識だ。日銀のウェブサイトには、日本銀行法で金融政策の独立性の確保が図られていることについて、「中央銀行には緩和的な金融政策運営を求める圧力がかかりやすい……こうした事態を避けるためには、金融政策運営を、政府から独立した中央銀行の中立的・専門的な判断に任せるのが適当であるとの考え方が、グローバルにみても支配的になっています。」という説明が掲載されている。
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