復調パナソニック、再建への重石 不振の携帯電話事業、抜本改革が急務

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パナソニックは今年3月末に発表した新中期計画(13~15年度)で、最終年度の15年度に向け、営業利益率5%以上とする経営目標を掲げている。前期まで2期連続の巨額最終赤字に沈み、前期の営業利益率も2.2%と低採算にあえぐパナソニックにとって、喫緊の課題は利益率の回復だ。これに対して今第1四半期の営業利益率は3.5%に改善した。中計達成に向け、まずは良好なスタートといえよう。

ドコモ「ツートップ戦略」が打撃に

ただし、課題もある。赤字事業の一つ、携帯電話の苦戦である。元々、国内で低シェアに甘んじていたパナソニックの携帯電話事業だが、足元で追い討ちをかけているのが、NTTドコモがソニーと韓国サムスン電子製スマートフォンを重点販売する「ツートップ戦略」だ。これに伴い、ソニー以外の国内勢の販売低迷は深刻化。パナソニックも同様に苦しんでいる。

第1四半期決算では、テレビ・パネル事業など他の赤字事業が前年同期比で赤字幅を縮めたのに対し、携帯電話事業を手掛ける子会社のパナソニックモバイルコミュニケーションズは、営業赤字54億円(前年同期は37億円の赤字)と赤字幅を拡大させた。

パナソニックが6月に投入した新型スマートフォン「エルーガP」

決算会見では記者から携帯電話事業の見通しに関する質問が相次いだ。河井常務は 「大変厳しい状況は間違いない」と認める一方、「継続はしていきたいが、事業方針は再検討を進めている状況」と述べるにとどめた。

パナソニックにとって、携帯電話の苦戦は中計達成への足かせにもなりかねない。実際、第1四半期決算は一時益の影響で最終利益が大幅に膨らんだほか、「今の為替水準なら(通期の)営業利益でさらに200億円くらい上乗せになる」と、円安の追い風も吹く。それでも通期業績予想を見直さなかった理由について、河井常務は「あえてお話すれば、携帯電話、デジカメ、テレビなどの改善をしっかりやっていけるかという話」と、その影響を示唆した。

中計では、利益率目標などに加え、14年度までの「赤字事業の止血」を目標に掲げる。足元で赤字幅が拡大している携帯電話事業を好転させないかぎり、中計達成に黄色信号が灯ることになりかねない。

(撮影:尾形 文繁)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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