東芝、「一つも失敗できない」生き残りへの道 半導体メモリ事業を売却できても不安は残る
もっとも、東証に退場勧告を出す覚悟は感じられない。「社会的な影響を考えると判断は難しい」(東証関係者)。東芝は東証の弱腰を見透かしているのかもしれない。
都合の悪い現実に目を背けたがつじつま合わせは限界に
2015年に不正会計が発覚して以降も東芝はつじつま合わせに終始していた。利益の水増しは、判明しただけで7年間、約2300億円に達し、2015 年7月には社長を含む8人の取締役が引責辞任。同年9月には、役員を大幅に刷新した臨時体制で再出発を目指したはずだった。が、本当に心を入れ替えていたわけではなかった。
不正会計を調べた第三者委員会はWHをまともに調査せず、日経ビジネスのスクープ報道で発覚するまで、WHが1156億円の減損を行っていたことを隠していた。
それでも東芝が自社の決算にWHののれん減損額として2600億円を計上するのは16年4月になってから。3月末に医療機器事業子会社をキヤノンに売却、その売却益で債務超過を回避できるメドが付くまで放置し続けた。
渋々行ったこののれん減損も、今から振り返れば、債務超過にならない範囲でとどめたと見られても仕方ないものだ。
2016年6月に、不正会計の調査報告に名前が挙がっていた原子力事業出身の志賀重範氏が会長に就任した。指名委員会委員長の小林喜光社外取締役は志賀氏について「若干グレーだが、余人をもって替えがたい」と語っている。
業績予想についても中間決算時までに4回も上方修正、11月時点での最終利益予想は1450億円としていた。
実際の東芝の業績はどうか。
「不表明」の決算ではあるが、2016年4~12月期はWHが進める米国原発の工事費用超過に起因する7166億円ののれん減損が響き、5325億円の最終赤字。株主資本は2256億円のマイナスとなり、「継続企業の前提に関する重要な疑義」が付いた。
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