フランス人が日本人の働き方に感じる「恐怖」

「忙しいこと」がなぜステータスなのか

しかし、時間が経てば経つほど、日本人はみんな自分の生活の慌ただしさとは関係なく、「元気にしているよ」と言う代わりに「忙しい」と言っているのかもしれないことに気づいた。そもそも日本では、仕事や生活が忙しいというのが、社会的によいことだと見なされているから、そうやってアピールするのは、ある意味で「今人生は充実している」と同じことなのではないかと。

「忙しい」にはバリエーションがあって、「残業が終わらない」「職場で徹夜することが多い」「昨日は終電だった」「最近4時間しか寝てない」「昼ご飯を食べる時間なんてないよ」というようなことを、日本の学校で働いている頃はしょっちゅう聞いた。そのときは言わなかったが、実は、心の中で私はいつもゾッとしていた。

日本人にあこがれるときもある

何がそんなにショッキングかというと、知り合いが仕事で苦労をしていること自体ではなく、彼らが苦労話をまるで当然のように、しかも半分笑いながら語っていたことだ。この国の人たちは、どうやら苦しい状況を受け入れているだけでなく、忙しいことにプライドまで持っているようだった。そんな日本人たちに囲まれていると、自分も負けずに頑張るべきだという気持ちになったが、いくら私が日本好きで日本文化になじもうとしても、やっぱりそこはフランス人。日本人と競うのには限界があった。

もしそこまで仕事に時間を費やしていたら、人生におけるほかのこと(趣味、友達関係、家族)を楽しめなくなり、精神的に潰れてしまうだろう。職場で徹夜したら家族やフランスの友人にとても心配されるはずだ。4時間しか寝なかったら確実に倒れるし、そしてご飯をちゃんと食べなかったらヘルシーでいられない。運よく「外国人」というステータスのおかげで、そこまで頑張らなくても許されることも多く、けっこう助かった。

でも結局、日本人の友人とそういう話をしたとき、仕事も努力も嫌いではない私は、日本人と比べると体力的にも精神的にも弱虫で、こんな自分に比べると日本人はタフな人種なんだと、うっとうしい思いをしたことが何度もあった。

実をいうと、日本人の我慢強いところに少しあこがれるときもある。寝不足は電車や会議での仮眠という、フランス人が上手にまねできない特技でカバーしているようだし、毎日の風呂や温泉、マッサージなど超効率的な疲労回復法のおかげで長時間労働に耐えている。ひょっとしたらご飯に秘密の食材が入っているから、疲れてもあんなに元気でいられるのかもしれない。体力競争で勝ち目のない私は、こんなふうに考えることもある。

実際に、日本には他国にはない、リフレッシュ法があり、フランス人も真似すべきだと考えている。個人的には、温泉と和食の大ファンだ。これらは元気な日常生活を送るのに欠かせない「エネルギー」になると思っている。

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