"中華スマホ"は「安かろう悪かろう」じゃない アップルも後追いする、真の実力とは?

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P9の発売後、アップルは「iPhone 7 Plus」において同様に2つのカメラを搭載した。スマホのトレンドをリードしてきたアップルだが、今や中華系メーカーを追随する状況になりつつある。

ファーウェイの「P9」は、ライカとの共同開発によるレンズを採用したカメラを2つ搭載。「ボケみ」のある写真を簡単に撮影できることで人気となった(写真:筆者撮影)

また、中国市場は地場メーカー同士の競争が激しく、世界シェア上位の3社だけでなく、レノボやZTE、一時は時代の寵児ともいわれたシャオミ(Xiaomi)など、多くのメーカーがしのぎを削っている。国内の厳しい競争環境も、端末の進化に大きく影響しているといえそうだ。

こうした端末の質の向上と、スケールメリットを生かしたコストパフォーマンスの高さが、日本のSIMフリースマホ市場における中華系メーカーの人気につながっているといえよう。最近では、ファーウェイのようにリアルのサポート拠点(修理の受け付けや使い方のアドバイスなどを展開)を設けるメーカーもあり、各社は日本市場に一層力を入れていく構えのようだ。

日本の地域ニーズに対応していくのか?

格安スマホのサービス拡大を進める総務省の思惑もあり、今後の携帯電話市場は、全体的に低価格志向が強まるとみられる。それだけに、低価格帯に強みを持ち、なおかつ幅広いラインナップを誇る中華系メーカーの人気は一層高まりそうだ。

とはいえ、日本市場に限った見方をすれば、課題もある。それは日本の地域ニーズへの対応が弱いことだ。防水・防塵機能や「おサイフケータイ」を利用するために必要な非接触通信のFeliCa(フェリカ)などは、国内メーカーのスマホには一般的に搭載されているし、最近では日本で人気の高いiPhoneでも対応が進められている。

だが、中華系メーカーはまだ日本におけるシェアが低いため、必然的に日本市場の優先順位も低くなりがちだ。それゆえ、コストがかかる日本向けのカスタマイズには消極的な会社が多く、グローバルモデルをそのままの形で販売する傾向が強い。実際、先に挙げたような日本固有の機能に対応した中華系メーカーのSIMフリースマホは、現状ほぼ存在しない。

グローバル重視の姿勢によって、日本固有の周波数帯や、携帯会社のネットワークへの対応が遅れる例もあり、これはユーザーがスマホを快適に利用できなくなることにもつながってくる。中華系メーカーがさらに普及するためには、地域ニーズに対応することで、日本市場に対する本気度を見せることが求められそうだ。

佐野 正弘 モバイルジャーナリスト

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さの まさひろ / Masahiro Sano

福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける

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