「格之進」のハンバーガーは何が違うのか

パテにはあえて「豚肉」を使用

「生産者や消費者、日本の“食”を守るためには、“安く買って安く売る”というような、今の構造は変えなければなりません。そのために、当社では牛を1頭丸ごと買い上げて、約80にわたるすべての部位の魅力を引き出し、堪能してもらう。そのことで、牛の価値を最大限まで引き上げているのです」(千葉氏)

確かに、同社の店舗の平均客単価を聞くと、1万~1万2000円と、決して安くはない。しかしその価値があると認めるからこそ、多くのファンがついているのだろう。

千葉氏は牛肉と海の幸とのコラボレーションのほかにも、肉の新たな可能性をさまざまに追求している。そのひとつが、「水風船理論」と呼ばれる理論に裏付けされた肉の焼き方だ。これは肉の繊維の断面を先に焼き、内部の水分をまず閉じ込めてから焼くということらしい。そのため、肉が風船のように膨らむのだそうだが、過去に肉がそのような状態になったのを見たためしがないので、どういう状況なのか想像もつかない。しかし少なくとも、普通に焼いたものよりは肉汁が多く仕上がりそうだ。

そのほか、「狂牛病以降でいち早くTボーンステーキの提供に取り組み、国内で初めて実現」(千葉氏)するなど、革新的な例は枚挙にいとまがないが、これらはすべて、牛肉に対する愛、そして食や農業に対する真摯な思いに支えられている。

「企業が事業によって利益を得るのは何のためか。“金儲けのため”と思っている人が多いのですが、本来は税金を払って国や社会に還元するためなんですよ」(千葉氏)

では、2月9日にオープンした新店舗、格之進Nikutellの例を挙げながら、千葉氏のまじめな取り組みについて説明していこう。まず立地である。この新店舗で、11店舗中5店舗が六本木での展開ということになる。なぜ六本木なのか。

「六本木が国際都市だからです。私は故郷である一関と東京をつなぐこと、消費者と生産者をつなぐことを目標に、取り組みを続けてきました。今後はさらに進んで、一関の魅力、肉の魅力を世界に紹介したいと考えています」(千葉氏)

塩麹に肉を漬けることで、うま味を引き出す

ネット通販でも人気のメンチカツを使った「メンチカツバーガー」税抜き800円。ランチはポテトがついて税抜き950円(写真:門崎提供)

また、Nikutellで提供しているメニューの中でも、郷土愛をひときわ強く感じるのがハンバーガーとメンチカツである。パテにはいわて南牛と花巻の白金豚を使用。地元産の希少な天然塩、野田の塩、門崎で特別栽培されている「めだか米」、岩手オリジナルの麹菌などから作られた「オール岩手」の塩麹に肉を漬けることで、うま味を引き出している。

「Nikutellで提供するハンバーガーのパテについては、最後まで迷いました。グルメバーガーブームの今は、牛100%の“肉々しい”パテが好まれます。でもあえて、“これがうちの味だ”というのを出したかったので、豚肉、卵、パン粉、牛乳などを加えたパテにしました。岩手の食材が一体となったおいしさを感じていただけると思います」(千葉氏)

客の反応を聞いたところ、まずは、そのジューシーさに驚かれるという。
「口にした途端、“肉汁がこぼれる!”という歓声が上がります」(千葉氏)とのことだ。同社の通信販売用商品を掲載した「肉カタログ」によると、同社のハンバーグは5種類の部位の肉を使用しており、「早く溶け出す脂」と「食べるときまで残る脂」など、部位ごとの特徴を考慮して配合が決められている。そのため、口にしたとき、最適な状態で肉汁があふれ出すというわけだ。

ちなみにこの「肉カタログ」には、ハンバーグやメンチカツ、塊肉などの通販商品が掲載されているだけでなく、肉の部位の解説や素材へのこだわり、製法、家庭でのおいしい肉の焼き方などなど、肉に関する情報が満載されている。まさに、千葉氏の“肉への愛情”を感じられ、格之進ファンでなくともお肉が好きな人にとって、なかなか読み応えのある1冊だ。

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