英国EU離脱で最も影響を受ける国はどこか

EU離脱通告後の英ポンドは買えるのか

つまり、ドイツ連邦議会選挙終了後、約1年の期間しか残されていないことになる。こうしたスケジュールに鑑みれば、2019年3月までの2年間は離脱協定(離脱に際し英国がEUに支払うべき費用や、EU圏内に居住する英国人、英国内に居住するEU市民の処遇等を定める協定)の締結を済ませる「離婚協議」にとどまり、「新たな関係」をめぐる交渉は2019年4月以降に持ち越しとなるとの見方が強い。

離脱へのカウントダウンが始まるに伴って、EU加盟国に与える詳細な影響も方々で議論されることになろう。厳密には「新たな関係」が定まらないことには何とも言えないが、離脱通告日の正式決定に合わせ、金融街シティと大手金融機関の関係がどうなるのかについて改めて焦点が集まっている。EU離脱により英国がシングルパスポートを喪失する以上、在英金融機関は善後策を考えなければならない。

「漁夫の利」を得るのは、結局ニューヨーク?

すでにいくつかの大手金融機関はロンドンの代替としてアイルランドのダブリンを欧州拠点とする方針を示唆しているが、いくら英語圏で地理的に近いからといっても、国際金融センターとしてロンドンが長年培ってきた産業クラスター(たとえば金融関連の法律、会計サービス等)が、ダブリンで完全に代替されるとは思えない。

そのほか、ロンドン凋落の裏でダブリンのほかフランクフルトやパリなどが「漁夫の利」を得る可能性が指摘されており、実際にそれらの都市への業務移管を検討している大手金融機関もある。しかし、3月に入ってからZ/Yenグループが発表した国際金融センター指数によれば、引き続きトップは2年連続でロンドンであるのに対し、ダブリンは33位、フランクフルト23位、パリは29位である。率直に言って、勝負になっていない。

こうした状況を踏まえ本当に注視すべきは、欧州内での拠点分散や再編を余儀なくされることで「欧州における金融業のコストがかさむ」という事実である。「勝者はダブリンか、フランクフルトか」といった見方は狭量であり、国際金融センターとしての地位が底上げされる可能性があるのはつねにロンドンとその地位を競ってきたニューヨークと考えるのが自然だろう。この点、EUにとって最初の離脱国が英国であったことの不幸である。

ちなみに前出の国際金融センター指数の2位は当然ニューヨークだが、この両者の順位が変わらなかったのはEU離脱決定を受けてロンドンが大きくポイントを落とした一方、ニューヨークもトランプ米大統領誕生を受けて大きくポイントを落としたからである。だが、ドナルド・トランプ米大統領は最長8年だが、英国やその他加盟国が離脱で被る政治的ダメージは不可逆性が強い。将来的にニューヨークとの差は縮まるかもしれない。

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