クスリの大図鑑 <過活動膀胱、排尿障害> 尿の悩みに新薬続々 海外はED薬併用へ?

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尿の途切れにバイアグラが効く?

一方の排尿障害(前立腺肥大症)は尿道が圧迫されて尿が途切れたり、勢いが弱まったり、お腹に力を入れないと出なくなったりするのが主症状だが、1993年に発売されたα1ブロッカー(効き方[2])のハルナールが薬物治療のトレンドを大きく変えた。前述したように尿道や前立腺に分布する“グローブ”であるα受容体の働きを遮断し、尿道をリラックスさせて尿の出をよくしてくれる。α受容体にはα1A、α1B、α1Dの3種類があり、このうちα1Bは血管にも多く分布する。以前よく処方されていたミニプレス、バソメッド等のαブロッカーはこのα1Bもブロックするため、血圧が下がりめまい等を起こすこともあった。その点、ハルナールはα1Aによく効きα1Bにはあまり効かないという“選択性”に優れている点が画期的だ。

昨年にはやはりα1ブロッカーのユリーフが発売された。対α1Aへの選択性が対α1Bの100倍以上と非常に高く、切れ味がいい。ただ、α1Aは射精機能にも重要な役割を果たすため射精障害を伴う可能性がある(ただし絶頂感はあり、勃起障害もない)。このほか、蓄尿をつかさどるα1Dへの親和性が高いα1ブロッカーであるフリバス、アビショットは「OAB症状を伴う排尿障害患者向きだと思う」(高橋教授)。

最近では、OABも排尿障害もまとめて「下部尿路症状(LUTS)」と呼ばれ始めている。前立腺のあるなしにかかわらず男女のOAB発生率はほぼ同じで、前立腺が正常な大きさでも排尿障害を起こすケースもあるからだ。頻尿でも排尿障害であっても男性ならメイルLUTS、女性ならフィーメイルLUTS。今後はこの呼び方が一般的になりそうだ。

欧米では一歩進んで「ペルビックヘルス(pelvic health=骨盤の健康)」というコンセプトも登場している。男性なら年をとればLUTSに加えてED(勃起障害)も伴う。両者を包括的に治そうという試みだ。実際、バイアグラやシアリスといったED治療薬とα1ブロッカーを併用するとLUTS/EDに相乗効果があるというデータが盛んに出されている。仮にバイアグラ等がLUTS治療薬に承認されれば爆発的な市場拡大となる。ちなみに欧米では、男性型脱毛症薬プロペシアに代表される5α還元酵素阻害剤とα1ブロッカーの併用で前立腺肥大の進行を抑制するとして当局の認可が下り、こちらは実際に処方されている。良しあしは別にして、彼我の差は大きい。


表とグラフの見方
 表は、疾病別の主要医薬品を2007年度売上金額の上位順にランキング。ただし一部の売上金額と前期比伸び率は本誌推定。また一部は薬価ベースでの売上金額を採用しており、売上高ベースより金額が膨らむ。一方、グラフは、代表的な先発薬と、その後発品とで自己負担額を比較した。後発品薬価は08年4月現在で存在する全品目の平均値で計算。また、実際の支払い時には薬局での調剤報酬等が含まれる場合がある。

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(週刊東洋経済)
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