ウーバー、「腐敗した企業文化」の行き着く先 シリコンバレー最悪倒産になりかねない理由
1週間後、トラニス・カラニックCEOがウーバーの運転手を罵倒するビデオが公開された。ウーバーが運賃を下げ続けるせいで収入が減ったと、運転手は不満を訴えた。「あなたのせいで私は破産だ」と言われたカラニックは激昂し、運転手をののしった。ブルームバーグがビデオを入手し配信すると、カラニックはまた謝罪する側に立たされ、同社のホームページに「リーダーとして根本的に変わり、成長しなければならない」という短文を掲載した。わかりきっていたことだ。
ウーバーにはネガティブな話題がつきまとう。イスラム圏7カ国からの入国を禁止したドナルド・トランプ米大統領の大統領令に抗議するタクシー運転手がニューヨークのJFK国際空港でストを行った先月は、ウーバーの運転手がスト破りをして営業を続けたことで抗議者側と衝突した。スマホからウーバーアプリの削除を呼びかける「#DeleteUber」運動がツイッターで広まり、同社は火消しに追われた(いくつかの推計によると、約20万人のユーザーがアプリを削除したもようだ)。
倫理なきトップ企業
その半年前には、サウジアラビアの政府系ファンド「公共投資ファンド」から35億ドルの出資を受けた。女性に運転を禁じ、同性愛者を刑務所に入れる外国政府の片棒を担ぐ印象になった。ある出資者はこの資金調達について、米フォーチュン誌にこう語った。「これで(CEOの)カラニックがどういう男かがわかる。誰にどう見られようと意に介さない」
そして今は、インターネット検索大手グーグルを傘下に持つアルファベットから、技術泥棒と名指しされている。ウーバーは昨年、米自動運転車開発ベンチャーのオットーを6億8000万ドルで買収。従業員の多くは、アルファベットの自動運転車プロジェクト部門が独立したウェイモの元従業員だ。アルファベットは元従業員の一部がウェイモから技術情報を盗んだと主張し、自動運転車開発の差し止めを求めてウーバーを提訴した。
ウーバーはかねてから、自分たちの未来は自動運転車にかかっていると言っていた。うるさい運転手たちに利益を分配して済むからだ。もしアルファベットが勝訴すれば、ウーバーはかなりの確率で、また一から自動運転技術の開発を始めるか、大金を叩いて他社の技術を買い入れる必要がありそうだ。
自動運転車という漠然とした未来を当てにするウーバーも、当面は16万人の運転手を満足させねばならない。だが先日のカラビックのビデオを見る限り、運転手たちは不満を抱えているようだ。彼らはウーバーのアプリでチップがもらえるようにしてほしいが、会社側は認めない。福利厚生を求める運転手からの訴訟も起きている。
運転手の年収を実際より多く見せかける求人広告を掲載したとして連邦取引委員会(FTC)に訴えられた裁判では、2000万ドルの罰金を払わされた。ライバルの米リフトは、ウーバーの運転手に対するひどい待遇を揶揄する広告を流して運転手を囲い込もうとしている。良心的なユーザーは運転手に優しいリフトを選ぶべき、というわけだ。