世界最大の「Twitter炎上事件」投稿者の末路 旅行中の「軽い冗談」が、身の破滅を招いた

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これが火に油を注ぐかたちとなった。炎上しているというのに、当人はそれをまったく知らずに空を飛んでいるとわかったからだ。

「#hasjustinelandedyet(ジャスティンはもう着陸したか)」というハッシュタグが全世界でトレンド入りした。サッコ本人がいつケープタウン国際空港に到着し、大炎上している事実を知るか、それを皆が興味津々で見守るという事態になったのである。彼女がどの飛行機に乗っているかをわざわざ手間をかけて調べる者まで現れた。しかも、フライトトラッカーのサイト(飛行中の航空機をリアルタイムで追跡できるサイト)へのリンクが貼られたことで、彼女の乗っている飛行機が今どこを飛んでいるかを皆がリアルタイムで確認できるようになった。

そしてついに、ジャスティン・サッコが飛行機を降りるときが来た。ケープタウン国際空港では、1人の男性が彼女の到着を待ち構えていた。報道関係者でも何でもない一般人だ。彼は空港に現れたサッコの写真を撮り、ツイッターに投稿した。

検索すれば、「炎上」の事実はすぐバレる

問題となったサッコのツイートは、確かに品はあまりよくないものの、実際には人種差別を意図したものではなかった。むしろ逆で、人種差別主義者たちの言いそうなことを真似し、揶揄したつもりだったのだ。普段から彼女の人柄を知る人であれば、誤解するはずもなかった。

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だが、彼女を攻撃する人にとっては、本人の意図など、どうでもよかったのだろう。いったんその人が悪者だと決まり、一斉攻撃が始まってしまえば、たとえそれを否定する意見があっても、場の空気によってかき消されてしまう。人間にはそういうところがあるのは否定できない。中には意図を故意に誤解する人さえいる。

ジャスティン・サッコは結局、この件が原因で職を失い、社会的に破滅してしまった。立ち直りは非常に難しいと思われる。炎上のことを隠してどこかに就職できたとしても、雇用主が彼女の名前を1度、インターネットで検索すればすぐに発覚してしまうからだ。

恐ろしいのは、同じようなことは私たちの誰にでも起こりうるということである。そして、彼女を攻撃した人たちのほとんどが悪人というわけではなく、ごく普通の人たちであるというのも恐ろしい。むしろ倫理観、正義感の強い人たちが「加害者」になりやすいということが、この問題を根深いものにしている。

(翻訳・構成:夏目 大)

ジョン・ロンソン ジャーナリスト/作家

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じょん・ろんそん / Jon Ronson

ロンドン在住。コラムニストとして活躍後、TVのドキュメンタリー番組を多数制作し、高い評価を受ける。ネオナチやKKKなどの過激思想家にインタビューした『彼ら』(未邦訳)で作家デビュー。邦訳された著書に『実録・アメリカ超能力部隊』(村上和久訳、文春文庫)、『サイコパスを探せ!』(古川奈々子訳、朝日出版社)がある。

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