「車優先」からいち早く転換した米大都市の今 交通を運賃収入に頼らない「公共サービス」に

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郊外にあるトランジットセンター(筆者撮影)

一方、郊外に出ると「◯◯トランジットセンター」という駅名がいくつかあることに気づく。気になって車窓から外を見ると、バスターミナルが併設してあった。対面乗り換えできる駅さえある。欧州や日本でも実例はあるが、駅名にトランジットセンターと掲げているから分かりやすい。

ダウンタウンに戻ってMAXライトレールを降り、平面交差しているストリートカーに乗り換える。ダウンタウンには東西方向に1路線、南北方向に2路線が走っており、すべて上下線が違う道に走っているので、合計8カ所の平面交差を見ることができる。こちらは3両連接の低床車で、全長約20メートルだ。ストリートカー専用乗車券もあるが、ライトレールの乗車券を持っていればそのまま乗ることができる。ライトレールと異なり、バリデーターは車内に設置してある。

こちらはまずダウンタウンを南北に貫くNSラインが2001年に開通し、続いてダウンタウンと川を隔てて東側のイーストサイドを環状運転する時計回りのAループと反時計回りのBループが2年前に開業した。

公共交通と自転車・歩行者のみが通行できるティリカム・クロッシング(筆者撮影)

筆者が乗ったのはBループで、しばらくダウンタウンを南に向けて走るが、まもなく街並みが途切れ、サウス・ウォーターフロントと名付けられたウィラメット川沿いの再開発地区に入る。オレゴン科学産業博物館を通り過ぎると、真新しい吊り橋を渡る。

ティリカム・クロッシングと名付けられたこの橋はループラインと同時に開通した。特筆したいのは、公共交通と歩行者、自転車だけが走れる「環境に優しい橋」であることだ。ここだけ見てもポートランドのまちづくりの方向性が分かろう。

リベラルな気風が生んだ交通政策

米国50州の中で、太平洋に面した3つの州(ワシントン・オレゴン・カリフォルニア)は昔からリベラルな気風が強いことで知られている。昨年の大統領選挙では、いずれもドナルド・トランプ現大統領を擁した共和党は敗れている。オレゴン州最大の都市ポートランドもその気風を受け継いでおり、米国でいち早く自動車優先社会から公共交通重視の政策へと転換した。

1969年には、それまでバラバラだったポートランド周辺の3つの郡(カウンティ)の公共交通を一元化したトライメット(TRIMET・Tri-County Metropolitan Transportation District of Oregonの略)という公営組織が誕生した。1970年代の市長選挙では都心への高速道路乗り入れが争点となり、反対派候補が当選。その予算を公共交通整備に使った。

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