米アマゾン、最終赤字に転落 巨額投資が利益を圧迫

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7月25日、米アマゾン・ドットコムの第2・四半期は最終赤字に転落。第3・四半期業績について慎重な見通しを示した。写真は同社のロゴ。昨年11月撮影(2013年 ロイター/Leonhard Foeger)

[サンフランシスコ 25日 ロイター] - 米ネット小売り大手アマゾン・ドットコムの第2・四半期決算は、最終損益が赤字に転落した。第3・四半期業績についても慎重な見通しを示した。これを受け、アマゾン株は通常取引終了後の時間外取引で2.8%下落した。

第2・四半期の純損益は700万ドル、1株あたり0.02ドルの損失。前年同期(700万ドル、1株0.01ドルの利益)から赤字に転落した。

売上高は128億3000万ドルから157億ドルに増加した。

トムソン・ロイター・エスティメーツがまとめたアナリストの予想は純損益が0.05ドルの利益、売上高は157億3000万ドルだった。

北米地域の売上高は30%増加した一方、インターナショナル部門は売上高13%増、損益ゼロだった。インターナショナル部門の不振は、米景気が改善し、収益率が向上している国内事業に影を落としている。

アマゾンは、ネット小売りから、タブレット端末などの消費者向けデバイス(端末)や企業・政府向けにクラウドサービスを提供するハイテク企業への転換を図っている。このために巨額の資金を投じ、利益を圧迫している。ただ、この方針は、これまでのところ投資家の信頼を得ており、アマゾン株は7月16日に最高値を更新している。

アマゾンは、第3・四半期について、売上高が154億5000万─171億5000万ドル、営業損益は1億ドルの損失─2億7500万ドルの利益と予想した。

アナリストの予想は、売上高が170億ドル、営業損益は3億9000万ドルの利益となっていた。

B. Riley & Coのアナリスト、スコット・ティルマン氏は「インターナショナル部門の業績は予想を大きく下回り、このことが業績見通しに反映された。国内事業で補いきれないほど海外事業は不振だ」と指摘。アマゾンをはじめ、多国籍企業は欧州の景気悪化に伴い欧州全域に広がる消費減退傾向に悩まされている。

第2・四半期のインターナショナル部門は損益ゼロで、今年1─6月の営業損益は1600万ドルの損失となった。第2・四半期の書籍や音楽、映画を含むインターナショナル・メディア事業の売上高は前年同期比1%減少した。

アマゾンのスクータック最高財務責任者(CFO)は、同社は海外では、書籍やCDなどの物理的メディアから電子書籍やMP3などのデジタルメディアに転換する初期段階にあると説明した。この転換には、多額の初期投資に加え、タブレット端末「キンドルファイヤ」など新たな市場向けの機器の開発とマーケティング、端末を介して販売するデジタルコンテンツの購入が必要となる。同社はまた、中国やスペインなどの商品発送センターに重点的に投資している。

同CFOは、アマゾンはホリデーシーズンを前に欧米でデジタルビデオコンテンツに多額を投じており、この支出が第3・四半期が慎重な見通しとなった一因と説明した。

一方、第2・四半期の国内事業は好調で、北米部門の営業利益は4億0900万ドルと、前年同期の3億4400万ドルから増加した。なかでも、クラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」は大きく成長。アマゾンはAWS事業の収益を決算報告の都合上「その他」項目に含めて発表しているが、第2・四半期の同項目の売上高は61%増加し、8億9200万ドルとなった。

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