人気風俗「五十路マダム」、応募殺到の舞台裏

南は熊本から北は仙台まで20店舗に拡大

同店では看護師、介護士などケアワークと熟年デリヘル嬢の二足のわらじ生活をしている女性が多い。その女性は、ラブホテルの一室で応急処置をしながら救急車の到着を待ち、病院まで付き添った。そして男性が息を引き取るまでの短い間、話し相手になっていたという。後から駆けつけた妻と子どもたちに事情を説明する役目は、スタッフが引き受けた。

看護職や介護職とこうした風俗業の共通点はつとに指摘されているが、そのホスピタリティの高さは高齢男性にのみ発揮されるわけではない。「離婚して風俗で子どもを育てた女性の苦悩」の南さんの常連客に、重度の障害者がいた。車いすで移動し、南さん曰く「手も使えない、足も使えない……。何をするんでもヘルパーさんの助けが必要」な男性だった。

健常な男性ならサービス時間がスタートしてすぐに自身で服を脱ぎ、シャワーを浴びることができるが、その男性の場合は南さんが服を脱がせ、ひざで体を支えながら浴室に向かう。その時間もサービスに加えるのが忍びなくて、南さんはいつも彼がシャワーを浴び始めてからスタッフに「サービス開始」の電話を入れていた。しかし介護保険の自己負担割合が1割から2割に引き上げられた2015年の夏、その男性から「もう遊びに行けない」と連絡があった。南さんはスタッフに「障害者割引とか、できんかね」と今でも相談している。

全国から求人への応募が殺到

障害や加齢によって体が思うように動かない男性にとって、同店のキャストたちがこれまで培ってきた経験値や人間力はことのほかしみ入るに違いない。“普通の奥さん”としてそれまで生きてきた女性たちにとっても、それは働きがいとなるだろう。しかもそれで“稼げる”というウワサを聞きつけ、全国から求人への応募が殺到した。

「近県だけでなく北海道や沖縄からの応募もありました。採用が決まれば交通費を出して入店してもらいます……が、そうこうしているうちに広島店の在籍が200人を超えてしまったんです。人数が増えると、ひとり一人に稼がせてあげられない。それで近県、さらには四国、関西、九州にも支店を増やしていったのです」

現在は南は熊本から北は仙台までの20店舗を展開。女性が希望すれば、別店舗への出張もできる。交通費は、店が負担する。遠い土地から来たキャストはフレッシュに見えるため、元の店舗より稼げるという。短期間で集中して稼ぎ、それを家族の下に持ち帰る。

同店のスタッフは、ほとんどが女性。しかも“元デリヘル嬢”の経歴を持っている。「稼げない」苦しさも、人の役に立つ充足感も、誰より知っている。彼女らは口をそろえて「悪い仕事じゃないんよ」と言い、今、女性が稼げるようにするためのネットワークを全国に広げようとしている。「五十路マダム」は単なるマニア向けの店ではなく、女性による女性のための互助システムを作ろうとしているのではないか。たくましく働く在籍女性とスタッフを見ていると、そんなふうにも感じられるのだった。

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