新幹線の「グランクラス」は儲かっているのか 客室狭い先頭部、普通車にするよりも有利?
いま挙げた条件で、27.9平方メートルの客室をもつE5系を普通車として使用した場合の償却期間は、乗車率100%で421日(約1年2カ月)、75%で574日(約1年7カ月)、50%で842日(約2年4カ月)となる。
一方、グランクラスとして使用すると、乗車率100%で342日(約11カ月)、75%で473日(約1年4カ月)、50%で683日(約1年11カ月)だ。仮にグランクラスの乗客数が9人(乗車率50%)であったとしても、普通車として使用した場合に償却期間がこれより短くなるのは乗車率が67%以上、つまり乗客数が平均20人以上の場合に限られる。
「はやぶさ」以外にグランクラスは必要?
このように、製造費の償却期間から普通車よりもグランクラスとして使用するほうが有利との結果が求められたものの、実際には一筋縄ではいかない。普通車は区間や時間を問わず一定の利用が見込めるのに対し、グランクラスはそうではないからだ。
筆者の見たところ、比較的距離の短い「なすの」のグランクラスはだれも利用していないか、乗っていたとしてもせいぜい1人か2人である。また、「なすの」より距離は長いものの、「はやぶさ」よりは短い「はやて」「やまびこ」のグランクラスもあまり利用者がいるような印象はない。そこで、グランクラスとして使用した場合の償却期間の条件を変えてみよう。
冒頭に挙げたように東北新幹線でグランクラスを連結した列車は98本あり、ほぼ半数のうち48本が「はやぶさ」だ。したがって、E5系が1日に2本の列車に充当されるとして、1本は「はやぶさ」、もう1本は「はやて」「やまびこ」「なすの」のどれかと仮定しよう。そして乗車率は「はやぶさ」が50%、「はやて」「やまびこ」「なすの」のどれかは厳しめに10%、つまり乗客1人とする。このときの償却期間は1230日、約3年4カ月だ。
参考までに、普通車として使用した場合、償却期間が1230日よりも長くなる乗車率は33%。つまり、乗客数が平均10人以下のときである。「はやぶさ」だけに使われるならともかく、ほかの列車にも使用されることを考えると、グランクラスより普通車のほうが償却期間は短くなる可能性が高そうだ。
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