プロ野球戦力外通告を受けた20代夫婦の現実 夢に寄り添ってくれた妻を後悔させたくない

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突然の戦力外通告だった。だが、ショックを受けている暇もなかった。まずいや応なく直面しなくてはならないのが生活費の問題である。

プロ野球選手の給料は、年俸を12カ月で分割して、毎月支払われる。康平さんが2016年にもらっていた年俸は800万円。戦力外通告を受けても、契約上、12月までは毎月66万円が支払われるが、年がかわる2017年1月からはまったくのゼロになる。

それまで住んでいた横浜のマンションの家賃は月13万円。貯金を切り崩しても、生活費は半年ともたない。

さらにそこに追い討ちをかけるのが税金だ。税金は、前の年、つまりプロ野球選手だったころの年収で計算される。収入がなくても、ざっと100万円ほどを払わなければならない。追い込まれた美佐さんは、ある決意をした。なんと、実家に居候する道を選び、互いの両親に頼み込んだのだ。

夫婦の生活は急変した

双方の実家を行き来して、居候させてもらう日々が始まった。当然、康平さんの実家では美佐さんの肩身が狭い。せめてもと、家事は義母がやる前に自分が動くと決めた。

この状況を一刻も早く脱するべく、美佐さんは、もう1度、教師に戻ることを考えていた。だが、そこには、ある問題があった。教師となるためには、住んでいる地域の登録が必要なのだ。夫の職が決まり、住む場所が決まらなくては教職に戻ることもできない。

そのために康平さんが、元プロ野球選手のプライドを捨てて向かったのはハローワークだった。

野球か? 安定した職業か?

康平さんに対して、ハローワークの職員は丁寧に応対してくれるのだが、肝心の本人が何をしていいのかわからない。社会人野球にプロ野球、ともに野球の才能を見込まれて「就職」できた。これまで一般的な職業の就職活動はまるで経験がなかった。

故障を抱える康平さんは、野球への未練を捨てて、それ以外の道を必死で模索していた。そんなある日、そんな彼の心を揺さぶる事態が起こる。プロ入り前に所属していた社会人野球のチームから「戻ってこないか」と誘われたのだ。

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