庶民派シュルツ氏、メルケル首相に勝てるか ドイツ社会民主党の首相候補は何者?
「ギリシャは大規模な改革を行なわなければならず、一般の国民に重い負担がかかっている」とステグナー氏は述べ、ギリシャ政府がすでに黒字を達成したと指摘する。「だがそれでもショイブレ氏には十分ではないという。この問題に対するSPDの姿勢はまったく異なる」
「SPD主導の政権が誕生すれば、この点に関して路線変更があるだろう」とステグナー氏は言う。「私たちは欧州に成長と雇用をもたらすことを望んでいる」
現在ドイツ議会の外交委員会に籍を置くSPD所属のアヒム・ポスト議員は、1994年からシュルツ氏を知り、欧州議会でともに働いた仲だが、やはり同じ点を強調する。
「成長と雇用のためにもっと力を注がなければならない」とポスト議員は言う。「ギリシャやポルトガルを、もっと苦しい状況に追いやり、賃金と年金が下がってしまえば、どうして経済成長を生み出せるだろうか」
ビーレフェルトの集会でもシュルツ氏の側に立ったポスト氏は、この旧友が選挙に勝つ決意を固めていると話す。
「候補になって満足しているわけではない。彼は首相になりたいと考えている」とポスト氏はロイターに語った。
庶民派
シュルツ氏は格差の克服に重点を置きつつ、SPDの政策面での特徴をさらに尖鋭化させようとしている。
メルケル首相率いる保守政権が11年続くなかで、7年間を少数連立与党として過ごしてしまったことで、その個性が曖昧になってしまったからだ。この妥協によって有権者は2大政党から離れ、難民受け入れに反対する新興右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭を招いてしまった。
ドイツの国内政界では新顔となるシュルツ氏には、メルケル首相が主導する「大連立」への参加という妥協の前科がない。この10年間でSPDは1000万もの票を失ったが、社会正義を追求するシュルツ氏の姿は有権者の共感を呼びつつある。
「彼は本物だ。一般庶民と同じ言葉で話している」と56歳のエンジニア、ヨハネス・ケンペルさんは語る。彼はビーレフェルトまで120キロを旅して、シュルツ氏の演説を聴きにきた。「彼は、普通の市民が抱いている不安に対して語りかけている」
2005年11月にメルケル首相が就任して以来、ドイツは着実な成長を遂げ、失業率は過去最低の水準まで下がっている。だが、多くの人は低賃金に甘んじており、経済のグローバル化によって貧富の格差が拡大するなか、取り残されたと感じている。
「ハンブルクの小さなパン屋が税金を払っているのに、隣にできた米国のコーヒーショップチェーンが税金を払っていないとしたら、あるいは大企業が何年も利益を増やしているのに、国内の実質賃金が停滞ないし低下していたら、これは公正とは言えない」。シュルツ氏は2月初め、ハンブルクに近いアーレンズブルクで開催されたタウンミーティングで、このように語った。