成長ベンチャーが日本経済を発展させていく 第3回ベンチャー大賞を受賞したのは?

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経済産業大臣賞: プリファードネットワークス / ファナック <ベンチャー企業・大企業等連携賞>

工作機械やロボットが「自律的に学び連動する」製造システムをつくる連携プロジェクトが、経済産業大臣賞(ベンチャー企業・大企業等連携賞)で表彰されています。

プリファードネットワークスは、さまざまなデバイスがネットワークにつながるIoTの技術と、機械学習(特に、深層学習)により急速に深まるAI(人工知能)技術を融合し、新しいイノベーションを起こすことを目指すベンチャー。国産唯一のオープンソースの深層学習フレームワーク「Chainer」を開発・提供し、分散コンピューティング、ネットワークに強みを持ちます。そして、その技術の具体的な応用分野を模索していました。

ファナックは、富士通のスピンオフベンチャーとして1972年の創業以来、産業用ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)の専門メーカーとして、工場における産業用ロボットの高度な制御や生産ラインの自動化に取り組んできました。今や売上高6200億円を超える大企業。しかし、近年、ロボットや工作機械の頭脳部分の強化の必要性を痛感していました。

両社の出会いは、プリファードネットワークスの西川徹社長のファナックの工場視察。「ロボットがロボットを作るファナックさんの製造ラインを見たときに『運命の出会い』を感じました」と西川社長。

2社が取り組む新しい製造ラインは、最先端のAI技術と世界最高水準の機械の制御技術を組み合わせた、高度に自動化・最適化された、止まらない製造現場を実現する試み。たとえば、ロボットが作業の経験から最も効率的な動作を学習する、過去の経験からいち早く不具合を発見する、複数のロボットが学習結果を共有して協調するなど、生産ライン全体の最適な動きを実現。「工場全体が自動的に賢くなる」仕組みをつくることで、モノづくりの革新を目指しています。

医療のブレークスルーを目指す

経済産業大臣賞: ナノエッグ <女性起業家賞>

ナノエッグは皮膚研究から、医療のブレークスルーを目指す企業です。薬効成分を皮膚をとおして患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)を開発。通常のDDSは飲み薬や注射で体内に薬を入れ、途中で分解されることなく患部に届けることを目指しますが、同社は皮膚からの投与という医薬品業界の常識を覆す試みに挑戦。皮膚投与は効率が極めて悪いという業界の常識にあえて挑戦しています。

山口葉子社長は、もとは物理学博士で液晶の研究者。物質の構造分析の観点から、従来医薬品業界にはなかった方法を着想しています。薬物を無機質の薄膜で覆い、皮膚の奥に届ける方法(ナノカプセル化DDS)と、皮膚細胞間脂質の構造をナノレベルで相転移(液体・固体の状態の移転)させるジェルに薬物をブレンドする方法(浸透DDS)を開発しています。

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