歩道の役割は「大量の人を運ぶ」以外にもある ドイツの「歩行者ゾーン」が活気に満ちる理由

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まず、自動車と歩行者の摩擦という点から考えてみよう。ドイツの10万人都市、エアランゲン市には現在、市街中心地に500メートルあまりの歩行者ゾーンがある。

ドイツ・エアランゲン市の1960年代のポストカード。道路の両側にある広場は、駐車場として利用されている(写真:筆者提供)

ただ、この場所の1960年代の写真を見ると、そんな場所はない。自動車が走り、道路と連続している広場にいたっては駐車場になっている。モータリゼーション(自動車の大衆化)によって、“富が集まる力強い社会”の雰囲気がつくられた。当時において市街中心地に自動車を走らせることは、それほど違和感はなく、それどころか、誇らしげに見ていた人もけっこう多かったのかもしれない。また小売店側からは、自動車を通さなくなると売り上げが落ちるのではという懸念もあったという。

ところがしだいに、「欠陥」も見えてくる。大気汚染や資源問題、そして自動車優先という価値観が強くなり、人間が疎外された街になるのだ。こういう空間は個人の心理的なストレスもさることながら、後に述べるように、「公共空間」としての機能が十分でないということを意味したのではないか。ただ、いざ一度自動車を通した道路を歩行者ゾーンにしようとしても、一朝一夕にはいかず、実験や議論を繰り返し、時間が十数年かかった。

そのかいあって、今日では小売店や、銀行、ギャラリー、レストラン、カフェ、図書館などの文化施設はもちろん、ベンチなども置かれる道になった。小売店の、自動車を排除したら売り上げに響くのではないか、という心配も杞憂に終わった。かつて駐車場になっていた広場も、コンサートやクリスマス市場などが開催できるマルチ空間へと変身した。文学や演劇などのフェスティバルが開催されると、このエリア一帯が会場の一部となり、文化的な雰囲気でいっぱいになる。周辺には、大型の駐車場が配されているところも多い。いわゆる「パーク&ライド」だ。こうしたドイツの中心市街地を調査していると、日本にもこれとよく似た場所があることに気づく。大型ショッピングモールだ。

「歩けるまち」は日本のショッピングモールにあった!?

日本の大型ショッピングモールには、小売店ばかりではなく、飲食店や娯楽施設、憩いの空間まである。写真はイオンモール幕張新都心店(撮影:尾形文繁)

巨大な駐車場があり、モールには多くの小売店や飲食店をはじめ、映画館などもある。特に何を買うわけでもなく、入り浸ってブラブラして過ごすだけの人も多いのではないか。そういう意味では「歩けるまち」風の空間がすでに日本にあるといえる。いっそのこと、ショッピングモールを運営する会社に「歩けるまち」をプロデュースしてもらうのがよいのではないか、と思ってしまう。

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