歩道の役割は「大量の人を運ぶ」以外にもある ドイツの「歩行者ゾーン」が活気に満ちる理由
数年前から日本各地で、「人が歩けるまち」をつくるべきだという議論が活発化している。その理由として、楽しさやにぎわい、人々の交流、イベントなどの「非日常」を味わえる……。こうした点が挙げられることが多い。確かにそんな街は楽しい。
健康という視点からのものもある。歩く人が増えると、住民の健康状態の底上げにつながるというのだ。日常的に歩くことは体力増進につながり、楽しい街を出歩くことは、精神の健康を保つうえでよいだろう。高齢化社会に突入する時代を考えると、心身ともに健康な人が増えることで、医療費や社会保障コストの削減にもつながる。
「人が歩けるまち」のヒントは、ドイツにあった!
日本の「人が歩けるまち」づくりを議論するうえでは、私が継続的に取材・観察しているドイツの街が1つの参考になるだろう。ドイツでは、すでに多くの地方都市が市街中心地で歩行者ゾーンを実現している。まるまる日本へコピーするのは無理があるかもしれないが、この空間にどんな価値があるのかを検討することで、「歩けるまち」をつくるためにはどんな論点があるのか、議論ができるだろう。
ドイツの歩行者ゾーンに関する議論は、1930年代から見いだすことができるが、活発になるのは戦後のこと。導入の理由は、自動車と歩行者の摩擦の解消や「ショッピングモール」としての都市開発、それから中心地は古い建物が密集していることから「歴史の再発見」という側面もある。一言でいえば、歩行者ゾーンによって街の魅力そのものを高める目的があった。1960年代には「ドイツ都市会議」も大いにこれを勧めている。
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