アニメーター、「平均年収332万円」という現実 ヒット映画連発でも現場は恵まれていない

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現実には多くが興収1億円に満たず、制作予算が1000万円以下の作品ばかりだという。監督やスタッフにかけられる金額はごくわずかで、少ない予算で完成させるために、通常なら準備1カ月、撮影1カ月かかるところを、準備1週間、撮影2週間に短縮するといった具合で乗り切っている作品がほとんど。当然作り手には大きな負担となる。

それでも映画作りを志す人はおり、そうした駆け出しの人材を集めて低予算の作品を完成させるプロダクションは少なくない。「中には最初のギャラだけ支払い、ビデオ化などで発生する二次・三次利用の報酬の権利を放棄させるケースもある」(佐々部監督)という。

アニメーターの職場環境は過酷

近年作品数が増加しているが、背景には映画のデジタル化や機材の進化により、ある程度の水準の映画が簡単に作れるようになったことがある。スマートフォンのみで撮影した映画作品も登場しており、低予算の作品が登場する土壌が整ってきている。これは新しい才能が出る可能性を広げるものの、映画作品が劣化していく危険性をはらんでいる。

映画界を牽引するアニメ業界も作り手には厳しい環境だ。日本アニメーター・演出協会が2015年に発表した、「アニメーション制作者実態調査報告書」によると、アニメーターの平均年収は332.8万円。民間給与所得者の平均に比べて2割ほど低い。年収が200万円以下の人が27%にも達する。報告書には「作業内容と報酬が見合わない」など、低報酬かつ厳しいスケジュールで作業をこなすスタッフの惨状が書き連ねられていた。

映画各社も小規模作品の上映機会を増やすなど、若手人材の発掘に努めてはいる。ただ、才能のある作り手を中長期的に確保するためには、報酬など経済的な底上げや環境整備が求められる。興収の配分の仕組み見直しなど、抜本的な構造改革を検討する必要もあるだろう。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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