「社会に適合できない」18歳が風俗を選ぶ必然 生涯の職業とすることは難しいが…

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「デリヘルのお仕事をしていても、お客さまが若いとパニクっちゃいます。何を話していいかわからなくなるから。だから、年上の男性が好き。40歳とか50歳ぐらいの人のほうが落ち着きます。私からはやっぱりお話できないんですけど、甘えれば喜んでもらえるので」

仕事をしているときが何よりも楽しいというマキホさんは、ほぼ毎日出勤している。収入も当然増えた……が、月にいくら稼いでいるのか、またはいくら稼ぎたいのかを尋ねても、マキホさんは首をかしげるだけで答えられない。とても頼りない。計算も苦手なようだ。けれど、おカネの使い道についてははっきりしている。

「特に欲しいものもなくて、出勤用の洋服や下着を買ったり美容院に行ったりするのに使うぐらい。でも安いものばっかりですよ、今日着ているコートもメルカリで、3000円ぐらいでした。あとは貯金しています。将来、それを学費にしたくて」

将来について考えられるようになった

自社ビルの1フロアを占める、キャスト女性のプロフィール写真を撮影するスタジオ(筆者撮影)

アルバイトを転々としていたときは、将来について考えることなんてなかった。デリヘルの仕事は始めたばかり。毎日が充実しているし、今から辞めることなんて考えられない。

「でも、店長さんやスタッフさんが“おカネは将来のことに使ったほうがいいよ”“ずっとできる仕事じゃないからね”って言ってくれるんで、自分でもそうしなきゃと思って。じゃあこの仕事を卒業したら何をしたいかなって考えたら、答えは介護士だったんです。私、おじいちゃん子だし、お年寄りのお世話をするのも好きだから、向いているんじゃないかなって」

だから専門学校に通うための学費を貯めることにしました、と話すマキホさん。今の彼女であれば、激務といわれる介護の仕事をこなすのは難しいだろう。というよりも、この無防備で未熟な女の子を丸腰のまま社会に出すとなると、親ならずとも心配になる。けれど、母親をはじめとする何人もの大人に見守られながら、少なからずの人生経験を積んだ後であれば……。

マキホさんが一般的なアルバイトを続けていたら、人間関係の難しさゆえに生きづらさが増していたかもしれない。社会と折り合いをつけるのが、もっともっと難しくなっていたかもしれない。けれど自分を受け入れてくれる人がいて、将来のことも一緒に考えてくれる人がいる。マキホさんにとってはこのデリヘル店が、本格的に社会に出る前に必要な、得がたい環境となるに違いない。そこに自力でたどり着いた彼女は、とても幸運だといえるのではないだろうか。

三浦 ゆえ フリー編集&ライター

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みうら ゆえ / Yue Miura

富山県出身。複数の出版社を経て2009年フリーに。女性の性と生をテーマに編集、執筆活動を行う。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』シリーズや『失職女子』などの編集協力を担当。著書に『セックスペディア-平成女子性欲事典-』がある。

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