「カラオケに自信がない人」に教えたい知恵 テクニックは大事だがそれだけでもない

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それから今に至るまで、ライブや楽曲制作においても「歌で思いを届ける」ことをずっと考え続けてきました。歌は本当にすてきなコミュニケーションツールです。

「音程がとれない」「高音が出ない」は気にしない

拙著『びっくりするほどカンタン! 誰でも歌がうまくなるDVDブック』で音と映像を交えて詳しく解説していますが、僕たちプロの歌手は、曲の世界観や感情をリスナーに伝えるため、さまざまなテクニックを使っています。

『びっくりするほどカンタン! 誰でも歌がうまくなるDVDブック』(アスコム)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

たとえば「アタック」というテクニックがあります。フレーズの頭を勢いよく、力強く歌います。スピード感、パワフルさがアップしてノリのいい感じになります。アップテンポな曲、元気のいい曲の歌い出しや盛り上げたいフレーズの頭で使うと、とても効果的です。

「第一印象が大事」というのは歌でも同じなのです。

歌い出しの表現方法はいろいろなパターンがあります。ゆったりした曲の場合は、逆に歌い出しをワンテンポ遅らせれば、幸せな気持ちや深い悲しみ、感慨などを表現できるでしょう。

スローテンポやしっとりした曲の最後で使う「タメ」というテクニックも効果的です。本来のリズムよりもややゆっくりめに歌うことで、余韻を残すことができます。曲やフレーズの出だしは慎重に、丁寧に歌っているのに、歌い終わりをあまり大切にしていない人は意外と多く、聴いている側を物足りない気分にさせないために有効です。

ほかにも「ミックスボイス」「しゃくり」「ビブラート」「こぶし」などのテクニックがあります。これらを使いこなせるようになれば、誰でも、どんな歌でも、情感豊かに歌えるようになり、歌うことがもっと楽しくなるはずです。

もっとも使い方によっては、テクニックは聴く人に「押しつけがましさ」を感じさせてしまいます。読者の皆さんもカラオケで「あの人の歌はテクニックがあるけど、心に響いてこないなあ」と思ったことはありませんか?

テクニックはあくまで感情をより豊かに表現するための道具。テクニックを磨くこと、披露することばかりに気を取られて、肝心の「心」を置き忘れてしまわないことが必要です。

歌を教えていると、よく「音程がとれない、高音が出ないけれど、どうすればいいか」と聞かれることがあります。正確な音程で歌え、高い音を無理なく出せることは、確かに大事かもしれません。歌い手の思いや曲の魅力が、相手に伝わりやすくなるからです。

ですが、音程がとれないこと、高音が出ないことを気にしすぎる必要はありません。音程やリズムが正確で、声量が豊かなら歌がうまいとは限らないからです。人によって意見は異なるかもしれませんが、僕はそういったことより「人の心をとらえられるかどうか」が大事だと考えています。

乱暴な言い方ですが「正確に歌う」ことは機械にもできます。しかし、言葉や音に感情を乗せて歌うことは、人間にしかできません。まず大事なのは、「相手に伝えたい」という気持ちを持って、自分らしく歌うこと。

それが、「歌がうまくなる」基本だと思います。たとえば、明るい歌を歌うときは、笑顔で歌う。それだけで歌は変わります。自然と声のトーンも変化し、歌声が明るくなり、相手に伝わります。正しい姿勢や正しいマイクの持ち方など、結構、簡単なことでもガラッと歌の表情は変わります。

中西 圭三 シンガーソングライター

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なかにし けいぞう / Keizo Nakanishi

1991年デビュー。この年、ダンスユニットZOOに提供した「Choo Choo TRAIN」(2003年にEXILEによりリメイク)がミリオンヒット。「Woman」「You and I」、ブラックビスケッツに提供した「タイミング」、NHK「おかあさんといっしょ」で好評を博した「ぼよよん行進曲」ほか、幅広い世代から支持を集める楽曲を制作し続けている。

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