駐車場業界は「シェア」の破壊力で激変する パーク24に迫るakippaの戦略

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このような革新的なビジネスモデルから、創業まもないベンチャー企業でありながら、akippaの登録駐車場数は業界3位となっている。その将来性に目を付けた企業も少なくない。たとえば2016年12月にトヨタ自動車が同社に出資し、トヨタ車に搭載されるナビサービスでakippaの駐車場が検索できるようになった。

現時点で駐車場数で勝るパーク24のような業界上位企業が、利用者や駐車場オーナーの利便性の観点からakippaと同じサービスを展開することも可能だろう。しかしそれは、今までの設備等の優位性を放棄し、企業戦略や組織体制・人員を大きく変えること、つまりビジネスモデルの大きな転換を意味する。

駐車場業界に限らずさまざまな業界で、シェアを武器とするベンチャー企業に挑まれ、難しい判断を迫られる既存の業界の盟主が、今後も増えていくだろう。

「自動運転」「電気自動車」時代に求められる駐車場の姿

また、全世界で実験が進む自動車の自動運転をにらめば、駐車場ビジネスは新たな段階に入ることがわかる。誰でも気軽に自動運転車をシェアして、タクシー代わりどころか自転車代わりに自由に移動することも考えられるが、その際にはシェアされる自動運転車が乗り捨て可能なほど全国各地に自動運転車向けの駐車場が必要になるからだ。その際、今までのような駐車場専用スペースだけでなく、akippaのような日時限定の駐車スペースのシェア活用が鍵になるだろう。

その一方で、このまま既存の駐車場ビジネスがシェアの前に敗北するかというと、そうとも言い切れない。自動車関連業界は来たるべき電気自動車時代もにらんでいるが、電気自動車向け充電ステーションの設置という意味では専用の駐車場を抱えているほうが有利かもしれない。実際に前出のトヨタは、電気自動車向け充電ステーションの設置ではパーク24と提携している。

駐車場業界としては、シェアリングエコノミーへの対応に加え、自動運転車と電気自動車への対応も考慮する必要があり、悩ましい決断を迫られることになろう。

将来の駐車場業界の覇者は、自動運転時代もにらんでシェアを活用するベンチャー企業なのか、電気自動車時代をにらんで充電ステーションを設置できる業界上位企業なのか、その両方をにらんで自動車関連ビジネス全域に影響力を増そうとする自動車メーカーなのか、まったくわからない。ただ1つ言えることは、このような企業の切磋琢磨の結果、誰が覇者になろうと、利用者にはより利便性の高いサービスがもたらされる可能性が高いということだ。

駐車場ビジネスだけでなく、どのような業界でもシェアのような革新的なビジネスモデルが導入されるたびに、業界の勢力図が書き換えられてきた。シェアリングエコノミーにおける報道では、侵食される既存の業界の反対が目に付くが、シェアのような新しい変化に対しては、より便利なサービスを生み出してきたという前向きな変化にも注目していきたい。

岡田 豊 みずほ総合研究所 主任研究員

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おかだ ゆたか / Yutaka Okada

1967年生まれ。慶應義塾大学卒業後、現在のみずほ総合研究所の前身である旧富士銀行系シンクタンク・富士総合研究所に入社。地域政策、地域活性化等を研究する。趣味の世界では、2000年のモノポリー世界選手権でチャンピオンに輝き、日本モノポリー協会専務理事の肩書も。モノポリー大阪版・横浜版の開発を監修し、各地元企業の知名度向上にも貢献している。

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