準大手の前田建設に就活生が続々集まるワケ 人手不足に悩む建設業界でなぜ人気なのか
そして就職活動中の学生からの人気も高まっている。同規模のゼネコンからは「内定を出した学生も前田建設にとられていった」という声も上がる。脱請負に対する関心が高いのか、特に目立つのが、将来的に経営企画や経理などを担う「事務系」を志望する学生だ。「昨年は想定以上に優秀な学生がたくさん応募してきて、事務系社員は当初の予定を上回る人数が入社する見通し」(同社)。
バブル崩壊後の建設不況時代、ゼネコンは新規採用を抑える時期が続いた。そのため30~40代前半の社員が少ないいびつな構造の会社が多く、各社は近年採用人数を増やしている。ただ、業界内では知名度や利益水準でスーパー5社(大成建設、大林組、清水建設、鹿島、竹中工務店)が圧倒的優位に立つ。準大手以下からは「内定辞退で予定していた数の学生を確保できない」(中堅ゼネコン幹部)という悩みも聞こえる中、前田建設のようなケースは特殊といえる。
オープンイノベーションを推進
2018年、同社は茨城県取手市に新技術研究所を設置する。メインコンセプトとなるのが「オープンイノベーション推進型」。最先端技術を取り扱う研究所は閉鎖的空間となるのが一般的だが、さまざまな分野のベンチャー企業がともに研究開発できるスペースを広く確保する計画だ。
前田建設はオープンイノベーションを推進する専門部署を設置してベンチャー発掘を進め、2015年からは資金的支援を開始。これまでに自動施工に必要な測位技術や、蓄電技術を開発するベンチャー3社に出資している。
共同研究を通した新事業の創出も視野に入れており、ベンチャー企業と積極的に連携する動きはゼネコンでは珍しい。「新しい価値やビジネスを生み出すような技術はベンチャーにこそある。技術の種はたくさんあるが、何に使えば付加価値を生み出せるのか、ゼネコンだからこそわかることがある」(大川尚哉・取締役常務執行役員)。
他のゼネコンでも、開発事業(施工だけでなく土地の仕込みから建物の管理運営まで担うこと)や洋上風力発電など、従来とは異なるビジネスを始める動きはある。ただ、会社によってはバブル期に開発事業を拡大した結果、地価の暴落で大損を招いた苦い経験もあり、本業以外の分野の開拓には本格的に足を踏み出せていないのが現状だ。
脱請負やベンチャーとの連携をはじめとした先駆的な事業がどこまで発展していけるのか、いまだ見通せない部分は大きい。それでも前田建設に注目が集まるのは、従来のゼネコンの保守的な姿勢が変革していくことへの期待感の表れなのかもしれない。
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