「東アジアの平和」は米軍に頼らざるを得ない 米新政権を孤立主義に走らせるのは危険だ
日本の安全保障の専門家はオバマ政権のリバランス戦略とトランプ政権のアジア安保政策の行方をどうみているのか。
元防衛相で拓殖大学総長の森本敏氏は19日夜のBSフジ番組「プライムニュース」で、「基本的にアジア太平洋の安定という点を考えると、大筋ではこの(オバマ政権のリバランス)政策は間違っていなかった。しかし、トランプ政権は多分この政策を見直すと思う」と指摘した。
その理由として、森本氏は、米国防長官候補のジェームズ・マティス元中央軍司令官による12日の公聴会での発言を指摘し、「あまりにもアジア太平洋に兵力を集中するのはどうか。もう少し中東湾岸を重視し、兵力を動かさなくてはいけないので、これをそのまま続ける考えは(マティス氏には)ない」と述べた。
確かにマティス氏は公聴会で、「『リバランス』という言葉を使うことには抵抗を感じる。他の地域に背を向けることを暗示するからだ」と述べていた。しかし、その一方で、「アジア太平洋地域の全ての国々に、持続的に関与できる軍の態勢を維持すべきだ」「地域に前方展開している軍を撤退させる計画はない」とも述べた。トランプ政権のアジア安保政策は、このマティス氏の言葉通りに実践されるのか。専門家の間でも疑念がある。
レーガン政権時代の「力による平和」に回帰
トランプ大統領は、レーガン元大統領が冷戦時代に唱えた「力による平和」を掲げている。強い米国を再生するため、軍拡競争も辞さない構えだ。トランプ大統領は自らの国家安保戦略を発表した昨年9月7日の演説で、安保政策ではIS掃討作戦に注力し、「就任から30日以内に軍司令官たちに計画を提出させる」と話した。さらにイスラム過激主義のテロを撲滅するため、ロシアやシリアを念頭に置き、いかなる国とも協力する方針を示した。権謀術数のマキャベリズムの姿勢だ。
さらにトランプ大統領は、次のようにきわめて具体的な軍事増強計画を掲げている。
これらが実行されれば、大幅な防衛費増額となる。軍産複合体もうごめいていることだろう。
ただ、長期的には、米国の覇権国としての力が弱まるのは必至だ。トランプ大統領もオバマ氏と同様に「世界の警察官」としての米国の役割を否定している。米国一極主義ではなく、同盟国や友好国を結集して、国際協調主義の下で「集団行動」をとっていく体制をつくれるのか。日本としては米国が「孤立主義」に走ることがないよう、同盟堅持を求めていくしかないのが実情だ。
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