東芝に上場維持観測、資本増強策に期待 「つぶせるわけがない」との思惑

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楽観論の裏側にあるのは、東芝の経営破綻はないとの思惑だ。「これだけの従業員を抱える企業をつぶすわけがない、つぶせるわけがない」(外資系証券)とみる市場関係者は少なくない。

BNPパリバ証券・チーフクレジットアナリストの中空麻奈氏は、東芝の借入金におけるメーン4行のシェアは16年3月期に41.5%と、5年間で33ポイント上昇していると指摘。「メーンバンクは簡単に手を引けなくなってきている」とし、デフォルトリスクは極めて小さいとみる。

東芝の昨年9月末時点の自己資本は3632億円。仮に7000億円規模の損失が発生すれば、債務超過となる恐れがある。

しかし、中空氏は「損失額が大きくなったとしても、日本政策投資銀行などを含めた融資や増資、事業売却などをセットで打ち出し、債務超過状態が長期にわたることを回避するのではないか」とみる。

東芝のCDSスプレッドは、370ベーシスポイント程度と観測されている。同じく巨額損失が浮上し、株価が155円まで急落した昨年2月は600ポイントを超えており、当時と比べれば破綻懸念が高まっているわけではない。

広がらなかった東芝ショック

同社株は2015年に発覚した不正会計を受け、東証から特設注意市場銘柄に指定されている。内部管理体制の問題に改善が見受けられないと判断されれば、上場廃止に至る可能性がある。

しかし、市場では「政投銀の支援でセーフティネットが広がった。債務超過で東証2部降格になることはあっても、上場廃止にまでは至らないのではないか」(国内証券)との見方が多い。「東証2部であれば、株式の売買に影響はない。シャープ<6753.T>の活況がそれを物語っている」(国内証券)という。

同社の格付けは、ムーディーズがCaa1、S&PがB─とジャンク級となっている。多くの運用機関はすでに保有株を売却済みで、足元の市場では投機筋が売買の中心とみられている。

ただ、米運用大手キャピタル・リサーチ・アンド・マネージメント・カンパニーが関東財務局に20日提出した大量保有報告書によると、同社は13日時点で東芝株の保有割合をこれまでの5.93%から7.11%に増やしている。

ブラックロックも13日時点での大量保有報告書で5.01%の保有となっているなど、一部のファンドはまだ保有を続けているようだ。

日経平均は、19、20日の2日間で243円の上昇。「東芝ショック」は広がらなかった。7000億円規模の損失となれば日経平均の予想1株利益を押し下げる懸念もあるが、円安による業績上方修正への期待が強いなかでは影響は限定的となっている。

とはいえ、企業としての東芝に対して明るい未来が見えたわけではない。半導体事業は利益が出ているが、今後も巨額な投資が必要だ。今回分かったように原発事業にはリスクが大きい。東芝は今後何で稼いでいくのかが、まだ見えない状況だ。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントCEOの菊池真氏は、「原子力事業はどこも触りたがらない。最終的に資金を出すのは国しかあり得ないが、過去の日本航空(JAL)<9201.T>のように、株主責任を問わなければ、大義名分が立たない」と指摘。「いったん上場廃止にして株主責任を取り、(不正会計に関与した)歴代の経営陣を刑事告訴する。そこまでいかなければ、国民の納得は得られない」と話している。

 

(長田善行 編集:伊賀大記)

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