米司法省が指摘したタカタの隠蔽工作の手口 「詐欺」行為は元幹部の刑事訴追へと発展
企業の再生手法では、大きく分けて法的整理と私的整理の2つの手法がある。法的整理は裁判所が仲介する厳格な法的手続きで、会社更生法や民事再生法といった商法上の手続きの中で債務カットや再建計画を遂行する。これに対して、私的整理は当事者間の協議で債務削減などの方法を柔軟に策定できる。
タカタ再建のケースでは、スポンサー候補の立場から望ましい手法は法的整理だ。裁判所が介在するため、手続きの公平性や透明性が保たれることがメリットだ。
エアバッグ問題を巡っては、リコール費用だけでなく集団訴訟費用などでも今後、多額の費用が発生するリスクがある。スポンサー候補は将来に偶発的に発生する費用負担を被らないためにも、法的な拘束力があり、債務額をきっちり確定できる法的整理を目指すのが理にかなっている。
タカタは私的整理を目指す
それに対して、タカタ側は法的整理は避けたいところだ。法的整理では原則として上場廃止や、100%減資による既存株主の権利消滅、株式価値の無価値化といった痛みを伴うことが多い。倒産というネガティブなイメージを世間に抱かれやすいことも法的整理のデメリットだ。
一方、私的整理は社会的な信用を維持することができ、直近の決算会見でも「製品の安定供給を継続するためには、私的整理以外の手段はない」(野村洋一郎取締役)との立場を明言している。ただ、法的整理であっても、下請け先や自動車メーカーとの取引継続についての合意や、債権者との債務整理案、再建計画についての合意を事前に取り決めてから法的整理へ移行することで混乱なく事業を継続する、プレパッケージ型再生という手法も存在する。
さらに今回のケースでややこしいのは、最大の債権者でありタカタの顧客である自動車メーカー各社の合意形成が難しい点だ。世界最大の自動車安全部品メーカー・スウェーデンのオートリブや、中国・寧波均勝電子傘下の米自動車部品メーカーであるキー・セーフティー・システムズ(KSS)などがスポンサー候補に残っているが、自動車メーカー各社でどちらを支持するかも分かれている。日系自動車メーカーからの支持が高いオートリブはエアバッグの世界シェア4割を占めるため、2割のシェアを持つタカタへの出資は、独占禁止法の問題をクリアするのに時間を要することが予想される。
肩代わりしたリコール費用に関しても、5560億円かかった最大顧客のホンダから数百億円程度で済んだ自動車メーカーまで、幅が大きいことも費用請求の姿勢で自動車メーカー間の足並みがそろわない一因になる。タカタ問題は最終局面に向かって動き出しているものの、再建にはまだ乗り越えるべき障壁が多いのが現実だ。
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