韓国「国政介入事件」、真相を究明できるのか

サムスン御曹司「逮捕状棄却」の影響は大きい

1月16日に特別検察は、サムスン電子の李副会長に対し、贈賄容疑で逮捕状を請求していた。すでに拘束・起訴されている崔氏と朴大統領に約430億ウォン(約42億円)の賄賂を渡したことが、特別検察チームが請求した令状に記された主な内容だ。

特別検察側としては、李副会長が父である李健煕(イ・ゴンヒ)会長(74、病気療養中)からの経営権承継を進めていた2015年、朴大統領に、サムスングループのサムスン物産と第一毛織の合併がスムーズに進むよう頼み、朴大統領にとって40年来の友人である崔氏側に賄賂を提供した、と判断した。両社の合併が成功すれば、李副会長の支配権が固まるためだ。当時、合併には外国人投資家など主要株主に反対意見があり、合併が成功するかどうか不安視されていた。

サムスンは「透明な処理」と主張

李副会長が手渡したとされる賄賂の内訳は、崔氏が関与するミル財団、Kスポーツ財団への出資として204億ウォン(約20億円)、崔氏が所有するドイツのダミー会社であるコレスポーツとの契約金213億ウォン(約21億円)、崔氏の親戚が運営する韓国冬季スポーツ英才センターへの支援金として16億ウォン(約1.5億円)、などだ。

また、この金額の一部は横領罪にあたるとし、特別検察は横領容疑も適用しようとした。李副会長が2016年12月6日の国会聴聞会で賄賂供与の容疑について「そんな事実はない」と偽証した部分も容疑に含めていた。

逮捕を免れた李副会長。だがサムスンには国民から疑惑の目が向けられた(写真:ソウル新聞)

逮捕状請求時点で、サムスンは李副会長について逮捕状申請の中身を全面否認していた。サムスン側は「崔氏側に見返りを望んで支援したことは決してなく、特に合併や経営権の承継について不正な請託を行ったという特別検察の主張は、受け入れがたい。裁判所はきちんと判断してくれるものと信じている」と発表していた。サムスン関係者は「内部の正式な手続きを何回も確認し、透明な会計処理による資金について、特別検察が横領と見なした」と言う。

一方、特別検察による捜査のメインターゲットは企業ではなく、朴大統領と崔氏だ。そのため、当初から関与企業に対する捜査は最小限のものにする方針だった。同チームは1月16日の会見で、「サムスン以外の企業は具体的に不正請託を行ったかどうか、あるいは金額を考慮して、立件範囲を最小化する。調査も特別検察の対象に限定してのみ行うことが大原則」と述べていた。

疑惑の中心にいる崔氏は16日、憲法裁判所での弾劾審判で承認として出席した際、「朴大統領と経済的利害をともにしたことはない」と述べた。

特別検察はサムスンだけでなく、ほかの財閥企業も視野に入れて逮捕状を請求しており、その背景には厳正な捜査を望んでいる大多数の国民からの支持があった。また、経営権の承継をうまくいかせるため、サムスン物産と第一毛織の合併についてサムスン側が崔氏に430億ウォンという巨額提供を行ったことは、今回の国政への不正介入事件の核心的内容だった。しかし、これによって恩恵を得た李副会長が処罰から漏れれば、事件全体が成り立たなくなってしまう。

今回の逮捕状棄却がもつ意味は大きい。限られた期間内で特別検察が疑惑を解明できるのか不透明な状況になってきた。

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