──よきメソッドはよきカルチャーの下でこそ光を放つ、と。
そうです。本を書くに当たっていちばん思いを込めたのが企業カルチャーの変革についてでした。なぜ皆がこぞってトヨタをまねてもトヨタになれないのか。問題は企業カルチャーなんです。トヨタ流の「なぜ?」を5回繰り返すフォローの文化なしに、いくらカンバン方式を入れても定着しない。かつて日産も研究し尽くして導入したけどダメでした。GMもダメだった。どちらも苗が生き生きと育つための土壌改良をしていなかったから。それと同じことです。
どの会社にも必ず問題意識が高く改革に前向きな少数派の“火種社員”がいるものです。経営者は彼らをまず自陣に引き込みタッグを組んで、彼らを改革のモデルとすることでその他大勢のヒラメ社員に新しいカルチャーを浸透させていく。私の経験上この方法がベスト。社長がいくらガナリ立てても変わらない。
「見える化」が改善の切り口に
──明日から実践できる作戦満載の本ですが、特に重視した点は?
課題を図表で「見える化」し実践メソッドを紹介すること。日本電産時代に、病巣はどこなのか、どうメスを入れるべきか、レントゲン写真が欲しくて、多様なパターンの図表や見える化マップを独自に創作し用いてきました。見える化することで、改善への切り口がわかります。自社の現実を図表化して見せるとみんな乗ってくる。たとえば市場構造に対し当社の顧客構造はズレている、というのが1枚の図表で明らかになる。
最初は中小企業の経営者を念頭に置いていましたが、だんだんとマネジメントの進化を求める管理職にも伝わる本がいいと思うようになった。それで改革メソッドを提案する章は、オリジナルの2面パレート図などを駆使し厚みを持たせました。営業に回るべき100件をどう選ぶかもきちんと分析・抽出できるようにした。自分で言うのも何ですが、見えていなかった部分の見える化をハンパなく提案したつもりです。
「ここまでやれば必ず変えられる!」がこの本の宣伝文句。日本電産時代の買収先の再建、独立してからのコンサル活動を通して、会社は変えられるという変なクソ自信がついちゃいましたね。独立する際に永守さんに書いた「たった7年在籍しただけの日本電産で学んだものは、三十数年いた日産の数百倍以上だった」というのは本当の気持ちです。
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