50歳からは「SNSのカリスマ論客」を目指せ 反論は恐れず「知的格闘技」を楽しもう

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たとえば、同窓会の会報に、今の仕事の専門分野について寄稿するよう依頼されたとしましょう。あなたがいくら知っていることとはいえ、きちんとした文章を書くとなれば、最新データの収集をはじめ、さまざまなテーマで情報収集することが必要になってきます。それを基に文章を書くので、その新しい情報が自然に自分の知識として定着します。

すなわち、アウトプットという目的があって初めて、それに向けてインプットしていくことで、効率よく情報を収集できるわけです。さらに、質問などの反響があれば、それに対して、また調べて答えることになるので、アウトプットすること自体が情報収集の機会となるのです。

さて、アウトプットの効用についてご理解いただければ、次はどこでそれをするのかということになるでしょう。少し前までは、普通の人がアウトプットをしようと思ったら、新聞や雑誌の投書欄に投稿するか、なじみの店の常連客に「うんちくオヤジ」をやるくらいしか機会がありませんでした。

しかし、今やネット上で、誰でも発信できる時代です。「ツイッター」や「フェイスブック」などのSNSやブログで記事を書いたり、ユーチューブでの動画配信を行ったり、「ニューズピックス」のようなニュースキュレーショサイトに意見を投稿することもできます。「ノート」のように、自分が書いたものに簡単に課金できるサービスも始まりました。

まったく無名の会社員が、ネットのブログからベストセラー作家になり独立していくことは、もはや単なる夢物語ではないのです。したがって、アウトプットをしようと思ったら、まずは、これらのネット上できちんとした発信を始めることをお勧めします。

「当たり障りのないこと」ばかり投稿しても無意味

ただ、重要なのはアウトプットの中身です。いざフェイスブックを始めてみても、当たり障りのないことや、本人以外、誰も関心を持たないような料理の写真やその日の出来事などの日常些事、あるいは、ニュースサイトの記事などの「シェア」を投稿するだけ、という人が少なくないのです。要するに、そこにその人独自の意見がない。一部の人にしか知りえないような専門分野の裏話などもない。これでは誰にも読まれません。

では、なぜこうした当たり障りのない投稿ばかりになってしまうのでしょうか。これは、多くの人が反論を恐れている、あるいは、もともと意見を持っていないから、と言えるでしょう。アウトプットをするからには必ず、誰かからの反論があることを覚悟しなければいけません。逆に言えば、もしここを突っ込まれたらどうするか?という、いわば想定質問をつねに意識しながら、アウトプットするべきなのです。

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一般的に、日本人は反論や批判を恐れ、それを避けるために頭を使う傾向があります。しかし、それが効果的なのは日本国内に限られます。それよりも反論や批判を受けて立ち、それに答える能力を身に付けるべきときではないでしょうか。そうでなくても、当然、反論されるような文章を書くほうがしゃれているというものです。むしろ、まったく反論されないということは、それだけ自分の言説が相手にされていない、ということです。

そういう意味では、最初から戦略的に、こういう反論が来てほしい、と反論を呼び込むような発信をすることもできます。反論が来たらどうしよう、と受け身にならず、あえてこちらから反論を取りに行くというスタンスになることで、知的格闘技のような楽しみを持つことができるはずです。

たとえわずかではあっても、こうしたアウトプットを続けることによって、必ずファンやフォロワー、あるいは、志を同じくする仲間ができるはずです。人間関係の新しいご縁が生まれるのです。そこから思いがけない新しい世界が始まるかもしれません。アウトプットすることによって得られる最大の報酬とは、まさにここにあるのではないでしょうか。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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