「ブロックチェーン」は世界をこう一変させる 仮想通貨の技術が国境を越えて駆け巡る時代

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ブロックチェーンの技術を使えば、契約書も自動的にプログラムで記述され、関係者が承認すれば契約を自動的に執行する、といったことも可能になる。この仕組みを「スマートコントラクト」という。従来、取引に付随していた膨大な手作業も不要となって、取引コストが削減され、カネやモノの取引を国境を越えて自由に展開できるインフラとして、機能する可能性がある。また、限られた取引参加者だけが参加し、閉じた環境で動かすタイプのブロックチェーンの開発や活用も進みつつある。

世界中のさまざまな企業や金融機関、政府が、一斉にこの技術を使った多様なサービスの実証実験を行っているが、それはこの技術によって、新たなビジネスや電子政府の可能性が広がると考えているからに他ならない。実際すでにビジネスとしてスタートしたものもある。具体的にどのような分野で期待されているのか。

データの改ざんを難しくすることから、ブロックチェーンへの政府の関心も高い。政府内には、国民の住民情報や健康情報、不動産所有情報などのデータがある。

たとえば、北欧の小国であるエストニアでは、国民IDによる情報管理が徹底しており、医療や投票などあらゆる場面でオンライン対応が可能となっている。役所に行くのは、人生において結婚、離婚、不動産取引だけということだ。同国ではこうした電子政府構築にあたり、政府が持つ各データベースをネットワークで結ぶ際、情報の改ざん検知のためにブロックチェーン技術を活用、データの安全性に対する国民の信頼を得ることに成功している。エストニアでは、次々と新たな電子行政サービスが展開され、政府の仕事が大胆に効率化している。税の徴収は98%が電子納付であり、効率性は日本と比較しても圧倒的に高い。

サプライチェーンや金融の分野で期待

民間ビジネスにおけるブロックチェーンの利用は、新しいビジネスチャンスを生み、いろいろな業種のビジネスモデルを変える可能性を秘めているのだ。

その技術が発展すれば、取引コストが削減されて企業の生産性向上を促し、取引情報を活用して付加価値の高いビジネスを展開できる。特にIoT(インターネット・オブ・シングス)、つまり全てのモノがインターネットでネットワーク化され、自動操作・制御などを通じてのビジネスが可能だ。分析に適したデータを異業種間で活用したり、情報に基づいてスマートコントラクトで自動制御したり、対応した金融サービスを提供したりすることも可能になってくる。

例を挙げれば、カーシェアリング。カーシェアを使いたいとき、スマートフォン(スマホ)のアプリで注文すれば、瞬時にスマートコントラクトが契約を自動執行し、代金が決済され、利用者ニーズにぴったり合った車が自動走行して目の前に止まり、ドアが開く、といった日が来るかもしれない。サプライチェーン(供給網)や物流の効率化、シェアリングエコノミーの健全な発展や、ヘルスケア分野での活用など、業種や国境を越えて活用され、利用者には安心を提供しながら、利便性と効率性を向上させることができるだろう。

英ベンチャー企業のエバーレッジャー社は、ダイヤモンドの鑑定書や取引履歴をブロックチェーン上でデータ化して取引できるようにし、そのデータについて警察や保険会社も参照できるビジネスモデルを構築した。これによって、横行していた鑑定書偽造や保険金詐欺をなくすといった社会的問題を解決しながら、安心して取引できる流通プラットフォームを作ることに成功している。

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