オーストリア「新生夜行列車」の意外な実力 噂のナイトジェットに乗ってみた

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では、新生ナイトジェットに死角はないのだろうか。

注文した朝食は、翌朝モーニングコール代わりに部屋まで届けられる。6品目で十分お腹一杯になる分量だ(写真:筆者撮影)

昨今の夜行列車衰退の一因と言われているLCCや長距離バスは、いまだ鉄道業界全体にとって脅威であることに変わりはない。両者はいずれも、低価格を最大の武器に利用者の支持を集めており、それに真っ向から戦いを挑めば、いずれ収益の悪化を招き、将来的には自分たちの首を絞めることになりかねない。

今回の乗車体験で、ナイトジェットは移動中の車内でゆっくりくつろげる快適さと、朝起きたら目的地という便利さ、すなわち鉄道ならではのサービスをより前面に押し出してきた印象を受けた。

LCCは、確かに価格が安く、何より早く目的地へ到着できる。しかし、ネット上で目を引くような激安価格のチケットは、たいていは提供される座席数が非常に少なく、早く買わなければ売り切れてしまう。さらに、例えば金曜日の仕事帰りに移動しようとしても、すでに最終便が出てしまっている場合もある。仮に間に合ったとしても、到着は深夜。空港へ到着して、ホテルにチェックインする頃には午前様ということもある。

長距離バスもやはり低価格が売りで、こちらは夜行列車と同じ夜間の移動だ。しかし日本とは異なり、横2+2列配置の通常座席を装備したバスが大半で、車内でゆっくり横になって休むということは不可能と思っていい。クシェットの早割価格は前述の通り59ユーロでバスよりやや高いが、狭いとはいえ寝台に横になれるというのは大いなる利点で、到着後の疲労感がまったく違う。

ナイトジェットの躍進は続くか?

しかしひとつ気になった点がある。長距離バスの一部には、無料Wi-Fiとスマートフォン電源用USBポートが装備されており、車内エンターテイメントという部分では、いずれも未装備の鉄道は一歩遅れを取っている。夜にWi-Fiなんて要らないだろう、と考えるのは早計だ。現代の若い人たちは、昼夜問わずネットを利用する機会が多い。高速列車ではこれらを装備する列車が徐々に増えてきており、今後夜行列車においても装備を検討する必要性が高まるかもしれない。

ダイヤ改正でシティナイトラインから引き継がれたハンブルク~インスブルック間の列車。途中のニュルンベルクやミュンヘンなど、ドイツ国内で下車する人も多かった(写真:筆者撮影)

ナイトジェットは、これまでオーストリア連邦鉄道が心がけてきた、乗客への行き届いたサービスをしっかりと受け継いでおり、そのサービスがドイツや周辺諸国へと拡大した形だ。

また2020年までに、普通寝台とクシェットともに新型車両を投入することも決定しており、すでに新型車両を発注している。

はたして、このサービスは周辺国でも受け入れられ、同社の躍進はさらに続いていくだろうか。今後しばらくは動向から目が離せない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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