オーストリア「新生夜行列車」の意外な実力 噂のナイトジェットに乗ってみた
クシェットは、もう何十年も前から基本構造は変わらないため、片側3段の6人部屋がいかに窮屈かは、利用したことがある方ならご理解頂けるだろう。それでも、20ユーロを追加しただけで横になることができるのだからありがたい。寝具のセットはすべてセルフサービスで、各寝台に置かれたシーツを自分で敷く。ナイトジェットのロゴが入った、お洒落な枕と毛布もセットになっている。大昔のクシェットと言えば、寝袋状になった紙のシーツという国もあったほど簡素だったが、今は狭くても快適だ。
翌朝、前日に回収した乗車券と共に届けられた朝食を見て驚いた。クシェットはこれまで朝食は付かず、せいぜい飲み物程度の提供だったが、飲み物と共にバターとジャムがセットになった大きめのパン2個が、トレイに載せられて運ばれてきたのだ。シティナイトライン末期の頃、普通寝台のサービスレベルがこの程度だったと記憶しているので、これは大した進歩だ。列車の混雑具合も、6人部屋で5つの寝台が埋まるほどで、かなりの需要があることが推察される。
アメニティと飲み物充実の普通寝台
では、クシェットの上位となる普通寝台は、どのようなサービスなのだろうか。
今回利用したのは2人部屋の普通寝台で、つい先日までシティナイトラインとしてドイツ国内で使われていた車両だ。個室は中段がないので、クシェット6人部屋のような窮屈さはない。個室の中には洗面台も設置され、トイレ以外で部屋の外へ出る必要はあまりなく、部屋を出る場合もカードキーによって施錠できるため安心だ。クシェットと違って寝具はすでにセットされており、自分でシーツを敷く必要はない。
圧巻なのは、アメニティなど各種グッズの充実度と、無料で提供される飲み物だ。アメニティには、タオルや石鹸以外に、スリッパと耳栓まで付く。飲み物は、ミネラルウォーターは一般的だが、なんとイタリア産プロセッコ(スパークリングワイン)とおつまみ、さらにはフルーツジュースまで付いていて、これらはすべて運賃に含まれているのだ。
また、朝食は乗車時に配られるオーダー用紙で、好きなものを注文できる。用紙には、21種類の品目が並び、自分の注文したいものを6アイテムまで選ぶことが可能。1アイテム1.20ユーロを払えば、追加注文することも可能だ。回収された注文用紙は、走行中に配送センターへ流され、翌朝に途中駅で積み込まれるという仕組みだ。メニューの決まった朝食ではなく、自分の好きなものを自由に注文できるシステムは、ほかでは例がない。
これらは、ナイトジェット以前のオーストリアの夜行列車ですでに行われていたサービスだが、ドイツ国内の運行区間も含め、新生ナイトジェットにおいても、きちんとサービスが維持されているのはうれしい。
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