オーストリア「新生夜行列車」の意外な実力 噂のナイトジェットに乗ってみた

拡大
縮小

その後、オーストリアとスイス国鉄が撤退したことで同列車はドイツ鉄道の単独営業となり、それまで連結されていなかった4~6人部屋のクシェット(簡易寝台車)も連結されるようになった。この頃から、路線数は増えたもののサービスの簡素化が目立つように。2014年12月には食堂車が廃止され、朝食は箱詰めされた簡素なものとなり、個室寝台に乗車したときの特別感は薄くなった。

その間に、乗客は年々低価格化の進むLCCや高速バスに奪われ続け、早期割引運賃の設定で対抗するも、もはや金額だけではどうしようもないレベルとなっていた。

そして2015年12月、ドイツ鉄道は1年後のダイヤ改正でシティナイトラインの全廃と、夜行列車事業からの完全撤退を表明。他国が運行するドイツ国内乗り入れの夜行列車は残るものの、ドイツを発着する夜行列車の大半はシティナイトラインが担っていたことを考えれば、ドイツから夜行列車が無くなるに等しい状況となることは疑う余地もなかった。

夜行列車を拡大するオーストリア

鮮やかな青い車体が印象的なナイトジェットの客車(写真:筆者撮影)

そんな中、噂に上っていたオーストリア連邦鉄道がドイツ国内発着の夜行列車事業へ参入し、路線の一部を引き継ぐと正式に発表。またこれを機に、オーストリアは夜行列車のブランドをナイトジェットへ統一し、全夜行列車ともこのブランドで再出発することになったのだ。

オーストリア連邦鉄道は、これまで夜行列車事業で年間100万人の乗客を輸送してきたが、ドイツまで守備範囲を広めた同事業の年間輸送量は、2020年までに180万人程度まで拡大すると予想している。

乗車するにあたり、オーストリア連邦鉄道のサイトから実際に予約を入れてみた。料金検索をすると、まずは変更不可能な早期予約割引(39ユーロ)と、通常運賃(59ユーロ)の2種類が表示される。さらに先へ進むと、座席とクシェット(6人部屋簡易寝台)、普通寝台を選べる選択画面が現れる。座席車を利用の場合は、運賃だけで乗車可能、クシェットの場合は上記運賃に20ユーロの追加、普通寝台は80ユーロの追加となる。

今回は比較のため、ドイツとの往復にクシェットと普通寝台をそれぞれ利用することにした。運賃は、往復とも早期割引が適用され、往きのクシェットは合計59ユーロ、帰りの普通寝台は合計119ユーロとなった。

次ページ簡素でも快適、簡易寝台でも朝食サービス
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT