下着感覚で装着!米国発の「電動スーツ」 Siriやルンバを生んだ米軍の研究から誕生

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スーパーフレックスは米国の研究機関SRIインターナショナルから2015年に分離独立したばかり。2016年12月21日には日本のベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインなどの出資により、960万ドル(約11億円)を調達したことを発表した。

日本でも本格的に事業展開へ

リッチ・マホニーCEOは日本での事業責任者採用に向け、面接などの活動も進めている

今後は米国と日本を軸に事業展開を本格化させる。2017年の前半には日本法人を立ち上げたうえで「2018年には製品を市場投入したい」とマホニー氏は意気込む。目下、日本での事業責任者の採用を進めているという。

スーパーフレックスの技術開発は、米軍の研究から始まっている。米国防総省には最新の軍事技術開発を担うDARPA(国防高等研究計画局)とよばれる部局がある。実はこれまでに、多くの著名な技術がこのDARPAのプロジェクトから生まれている。古くはインターネットがそうだ。最近では米アップルがiPhoneに搭載している人工知能「Siri」、米アイロボットのロボット掃除機「ルンバ」などがそうだ。

そのDARPAのプロジェクトの一つに、「ウォーリアー・ウェブ」(直訳すると、兵士のくもの巣)と呼ばれるものがあった。戦場で日々50キログラム近い荷物を背負う兵士の環境を改善すべく、くもの巣のように繊維を体に張り巡らした電動スーツの開発を目指したプロジェクトだ。 

DARPAのプロジェクトで開発していた当時のプロトタイプ。現在開発中のものよりもかさばっていた(写真:SRIインターナショナル)

当時SRIインターナショナルにあったマホニー氏らのチームは、このプロジェクトの下でDARPAの支援を受けながら軽量なモーターやアクチュエーターの開発を進めていた。

開発を進めながらベンチャーキャピタルの投資家と話をするうちに、とりわけ高齢者の市場で需要がありそうだとわかってきた。商用化のための開発に集中するため、マホニー氏は1年ほど前にSRIを去り、スーパーフレックスを立ち上げたのだった。

他のDARPA発の技術と同様に、スーパーフレックスも、人間を支援する電動スーツとして世界のスタンダードになれるか。今回の増資で、ようやく本格的な挑戦が始まる。

(撮影:風間仁一郎)

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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